理化学研究所は、心臓の初期発生で見られる左右非対称のループ状構造が、心臓をつくる細胞そのものの再配列により形成されることを明らかにした。
理化学研究所は2020年4月16日、心臓の初期発生で見られる左右非対称のループ状構造が、心臓をつくる細胞そのものの再配列によって形成されることを発見したと発表した。
研究では、心臓の明確な左右非対称性が現れる、Cルーピングというプロセスについて検討。ニワトリ胚を用いて、二光子顕微鏡による四次元計測と、細胞軌道情報から臓器形態の変形過程を再構築する数理的手法により解析した。
その結果、心筒と呼ばれる原始心臓内の組織が左右で異なる方向に伸長することで、左右非対称のループ状構造が形成されることが分かった。また、その主な要因が、右側の心筋組織で特定方向に細胞が並び変わる「細胞の再配列」であることを明らかにした。再配列は、右側の心筋組織では長軸方向への伸長に大きく寄与した。
さらに、Cルーピングは、細胞骨格であるアクチン重合に依存していることが判明。一度形成された心臓組織の管は、静的に保たれているのではなく、管を形成する心筋細胞集団が次々に並び変わることで自ら形作ることが分かった。
これまでCルーピングを説明するモデルとして有力だった2つの仮説は、空間的な制約や外部組織からの細胞流入を前提としていた。今回の発見により、心臓を構成する細胞の集団運動という内因的かつ動的な要因により、左右非対称な心臓を形作ることが示された。
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