東北大学は、心臓リンパ管の異常が冠動脈のけいれん(冠攣縮)の原因となることを、ブタモデルを用いて証明した。薬剤抵抗性の難治性冠攣縮性狭心症において、心臓リンパ管が新規治療標的となることが期待される。
東北大学は2019年3月29日、心臓リンパ管の異常が冠動脈のけいれん(冠攣縮:かんれんしゅく)の原因となることを、ブタモデルを用いて証明したと発表した。同大学大学院医学系研究科 教授の下川宏明氏らの研究グループによる成果だ。
研究グループはこれまで、冠動脈の外側に炎症が生じると、血管の筋肉におけるRhoキナーゼの発現・活性が上昇し、筋肉が攣縮を起こす原因となることを明らかにしている。血管の外側には、血管に栄養を供給する微小血管や自律神経などの組織があるが、その1つに、冠動脈の近くを走っている心臓リンパ管がある。
今回の研究では、この心臓リンパ管を結紮してリンパ管の機能を抑制し、薬剤溶出性ステントを植え込んだブタ冠動脈の冠攣縮反応の変化を調べた。その結果、リンパ管の機能を抑制すると、冠攣縮が悪化した。
顕微鏡下で組織の構造を観察したところ、冠動脈外膜のリンパ管数が減少し、炎症反応が増強され、Rhoキナーゼの発現・活性が上昇していた。これにより、心臓リンパ管の機能不全が冠攣縮に関与していることを証明できた。今後、心臓リンパ管が、複数の内服薬でも症状が改善しない薬剤抵抗性の難治性冠攣縮性狭心症において、新規治療標的となり得る可能性があるとしている。
狭心症は、体を動かした際に胸痛などの発作が起こる労作性狭心症と、安静時に冠動脈のけいれんによって発作が起こる冠攣縮性狭心症がある。特に、難治性冠攣縮性狭心症は、突然死を引き起こすこともあるため注意が必要だ。また、労作性狭心症の薬剤溶出性ステント治療後にも、冠攣縮による胸痛が残ることが知られている。
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