京都大学は、人工神経接続システムを用いて、手の運動機能がない脳領域に運動機能を持たせることに成功した。システムを介して脳の信号をまひした筋肉に伝達したところ、10分程度でシステムに適応し、手を自在に動かすことができた。
京都大学は2019年10月21日、人工神経接続システムを用いて、手の運動機能がない脳領域に運動機能を持たせることに成功したと発表した。国立長寿医療研究センターとの共同研究による成果となる。
今回開発した人工神経接続システムは、脳の神経細胞と似た役割をするコンピュータで上位の神経細胞の情報を受け取り、次の細胞にその情報を伝えるように設計されている。このシステム利用し、脳梗塞によって損傷した脳と脊髄をつなぐ神経経路の損傷部位をバイパスし、脳の信号をまひした筋肉に伝達した。
その結果、10分程度で脳梗塞モデル動物は人工神経接続システムに適応し、まひした手を自在に動かすことができた。人工神経接続システムへの入力源となる大脳皮質の脳活動は、まひした手の運動の上達に対応して変化し、手の運動をつかさどる脳領域が小さく集中するように脳活動の適応が見られた。また、手以外の運動をつかさどる脳領域や感覚機能をつかさどる体性感覚野でも、人工神経接続システムを介して手の運動をコントロールする機能を持たせることができた。
人工神経接続システムが損傷した神経経路の役割を代替したり、脳に新しい運動の役割を与えられたことで、脳梗塞によって脳の一部が損傷しても随意運動機能の再建ができる可能性が示された。
今後は、長期間の人工神経接続システムにより、脳損傷や脊髄損傷から免れた神経のつながりを強化し、人工神経接続システムがなくても自分の意志で体を動かせるように回復できるかの検証を進めるという。
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