京都大学は、3Dスキャン技術を解剖生理学に応用し、細胞分布の解像度に迫る精度で、脳全体のスキャン画像を重ね合わせる技術を開発した。さまざまな規模の脳活動を連続的に分析できるようになるため、脳のシステムを深く理解するのに役立つ。
京都大学は2019年6月4日、3Dスキャン技術を解剖生理学に応用し、異なるスケールの脳活動を連結する技術を開発したと発表した。この研究成果は、同大学医学研究科特定准教授 下野昌宣氏らの共同研究グループによるものだ。
摘出直後の脳の3Dスキャン画像を撮像する場合、ノイズレベルを抑えるために脳の表面に付いている水分を拭き取る必要がある。また、摘出脳から作成したスライスで十分な活動を計測するには、脳摘出からスライス作成までのプロセスを迅速に進める必要がある。
今回、同研究では、「3D-NEOプロトコル」という実験手順を用意し、ウェット系の生理実験に初めて3Dスキャナを導入。その結果、3D-NEOプロトコルでは、脳表面計測時のノイズレベルを小さく抑えつつ、スムーズに処理できた。
脳を摘出する前のMRI計測データと、摘出した脳の表面を計測した3Dスキャンデータ、それぞれのデータから画像解析によって抽出した脳表面画像を重ね合わせることで、摘出した脳から作成するスライスの位置を摘出前の脳座標上に正確に埋め込むことができた。結果として、細胞分布の解像度に迫るほどの重ね合わせの精度を得られた。
同技術により、ミクロな神経回路網とマクロな脳解剖領域との橋渡しをして、さまざまな規模の脳活動を連続的に分析できるようになる。脳のシステムを深く理解するのに役立つほか、細胞スケールおよび解剖学スケールの研究の間で、連携と情報交換が促進され、新たな発見につながることが期待される。
研究グループは、今後、複数の技術を結集して、精神疾患や脳の発達過程などの探求に応用することも検討している。
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