京都大学は、神経活動データからその背後にある脳神経回路を高精度で推定する解析法を開発した。解析プログラムは現在公開中で、webアプリケーションも提供している。
京都大学は2019年10月4日、神経活動データからその背後にある脳神経回路を高精度で推定する解析法を開発したと発表した。解析プログラムは現在公開中で、webアプリケーションも提供している。同大学理学研究科 准教授 篠本滋氏、国立情報学研究所 助教 小林亮太氏が、理化学研究所、立命館大学、大阪市立大学、ユーリヒ研究所、米国立衛生研究所と共同で行った研究の成果だ。
本研究では、2つのニューロンのスパイク時系列の相互相関を計算。次に、機械学習の基盤組織として確立してきた一般化線形モデルを相互相関に適用することで、外部信号の影響を消し去り、ニューロン間のシナプス結合を高精度に把握する。この解析プログラムを「GLMCC(Generalized Linear Model for Cross Correlation)」と名付けた。神経結合の強さをシナプス膜電位の単位で推定でき、求めたい膜電位レベルに応じて必要な計測時間を見積もることができる公式も導出した。
次に、1000個のモデルニューロンからなる神経回路のシミュレーションを実施し、結合推定の精度を検証した結果、従来手法と比べて高い推定精度(精度:97%、MCC:0.7)を確認した。また、脳の局所回路に近い1万個のモデルニューロンからなる大規模神経回路のシミュレーションからも、本手法の有効性を確認した。
さらに、ラットにおける計測データを適用し、海馬の神経細胞間の神経結合を推定。専門家が判定した結果と一致していることを確認した。また、神経細胞間の結合確率はスライス実験での結果と整合していることも確認した。
脳の情報処理メカニズムを理解する上で神経回路の構造を知ることが重要だが、これまでは周囲のニューロンや外部信号の影響から高精度な推定はできなかった。本研究で構築された解析法により、脳内の異なる機能領域における情報処理や情報の流れの違いを明らかにすることが期待される。
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