京都大学は、体内リズムの発現に必要なDNAのスイッチを発見した。体内時計の制御機構に加え、これまで重要とされながらも確認されていなかったゲノムのノンコーディング領域におけるDNA配列の役割が、日々の活動制御のレベルで解明された。
京都大学は2019年6月12日、体内リズムの発現に必要なスイッチとなるDNA配列を発見したと発表した。この成果は、同大学大学院薬学研究科教授 土居雅夫氏らの研究グループによるものだ。
研究グループは、ゲノムのうち、タンパク質をコードしない「ノンコーディング領域」と呼ばれる領域のDNA配列に着目した。まず、体内時計の振動形成において主に機能する、5'上流プロモーター領域のシスエレメントE'-boxに点変異を導入したマウスを作成し、同マウスの行動量や体温の日内変動を計測した。その結果、時計遺伝子のプロモーター領域のシスエレメントが、安定的な概日リズム形成に不可欠であることが分かった。
また、体内時計の最高位中枢器官である視交叉上核と末梢臓器のスライス培養での計測結果に加え、末梢組織から採取した初代培養細胞を用いて時計遺伝子の発現リズムをmRNAおよびタンパク質レベルで追跡した結果からも、このシスエレメントが組織自律的な概日リズム形成に必須であることが示された。
同研究により、体内時計の制御機構が明らかになり、これまで生物の発生や進化の過程において重要とされながらも、確認されていなかったノンコーディング領域のDNA配列の役割が、日々の活動制御のレベルで解明された。
最近のゲノムワイド関連解析から、ヒトのゲノム上のノンコーディング領域には、朝型、夜型に関連がある一塩基多型が多く位置することが示されている。今回の成果が、体内時計を制御するノンコーディング領域の役割について理解を深めるのに役立つことが期待される。
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