京都大学をはじめとする共同研究グループが、認知症の介護において優しさを伝える介護技術「ユマニチュード」のうち、目線の使い方などの「見る」技術をAIで評価する手法を開発した。
京都大学は2019年7月11日、認知症の介護において優しさを伝える介護技術「ユマニチュード」のうち、目線の使い方などの「見る」技術をAI(人工知能)で評価する手法を開発したと発表した。九州大学、東京医療センターとの共同研究による成果だ。
今回の研究では、ユマニチュードの初心者、中級者、熟練者それぞれについて、介護動作中の目線や頭部の動きを頭部装着カメラで撮影。その後、顔検出技術やアイコンタクト検出技術により、アイコンタクトの成立頻度や頭部の姿勢、距離などを検出した。
その結果、介護者の習熟度によって、アイコンタクト成立頻度や顔間の距離、顔正対方向の角度に大きな差があることが分かった。
14人の介護者のデータを統計的に分析処理したところ、初級者と中級者、熟練者の間に明らかな境界が見られた。これにより、介護者の動作スキルをAIで評価できる可能性が示された。つまり、介護で重要なコミュニケーション要素である「見ること」の定量化に成功した。
見ることの定量化は、介護技術の学習者が自分のスキルを振り返ったり、介護技術を向上したりするのに活用できる。研究グループは、これを国内の大学に展開し、医療、看護系学生のセルフトレーニングに活用する実証実験を計画している。
優しさを伝える介護技術ユマニチュードは、日本でも病院や介護現場を中心に導入が広がりつつある。しかし、同技術は人対人による訓練のみで習得するため、多くの人に確実に伝えるのは難しかった。今回の研究成果を生かした、「優しい介護」のコミュニケーションスキルを多くの人が学べるシステムの確立が期待される。
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