理化学研究所は、AI(人工知能)を活用した、早期胃がんの高精度な自動検出法を確立した。早期胃がんの有無に加え、その領域まで自動で検出することに成功した。
理化学研究所(理研)は2018年7月21日、AI(人工知能)を活用した、早期胃がんの高精度な自動検出法を確立したと発表した。早期胃がんの有無に加え、その領域まで自動で検出することに成功した。理研光量子工学研究センター チームリーダーの横田秀夫氏が、国立がん研究センターと共同で解明した。
同研究では、機械学習の1つであるディープラーニング(深層学習)を用いて、内視鏡画像から早期胃がんを自動検出する方法を考案。画像中の物体検出にディープラーニングを応用する場合、一般的に数十〜数百万枚の正解画像が学習用データとして必要となる。早期胃がんは、良質の正解画像の収集が困難のため、少ない学習用データで学習させる新たな方法を採用した。
具体的には、約100枚の正解画像と正常画像から「がんの部分」と「正常の部分」を含む領域をランダムに切り出し、約2万枚の画像を取得した。データ拡張技術を利用し、この画像を約36万枚まで増やした。その画像をコンピュータに学習させ、学習に用いていない画像を使って、各画像について正しい判断ができるか検証した。
その結果、感度(がん画像中、正しくがんと判断した割合)は80.0%、特異度(正常画像中、正しく正常と判断した割合)は94.8%だった。また、コンピュータががんと判断した画像中、実際にがんだった割合は93.4%、コンピュータが正常と判断した画像中、実際に正常だった割合は83.6%だった。胃炎や胃潰瘍と特徴が似ていて判断が難しい例も、高い確率で判断できたという。
さらに、内視鏡画像から早期胃がんの領域を自動検出する問題を与えたところ、領域まで高精度に自動検出することに成功。86.2%について、正しく「がん」や「正常」の領域を自動検出できた。
今回の研究で、学習用データとして使用した約200枚の画像のうち、医師ががん領域を示した画像は100枚のみだった。一方、コンピュータは、平均約90%の高確率で「がん」または「正常」を判断できた。一般的に、学習データの質と量によって機械学習の正解率が決まるため、学習により多くの情報を利用することで、正解率の向上が期待できる。
これらの成果は、胃がんの見逃しを減らし、早期発見・早期治療への貢献が期待できる。今後、臨床現場で医師の判断を支援する知能として、早期実用化を目指すとしている。
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