パシフィコ横浜で2018年4月13〜15日に開催された「2018 国際医用画像総合展(ITEM2018)」。今回は、医療分野におけるAI(人工知能)技術に関する同イベントでの展示内容を中心に主要各社の取り組み状況を紹介する。
日本画像医療システム工業会が運営する「国際医用画像総合展(ITEM)」は、医用画像機器および周辺機器の総合学術展示会だ。今回の「2018 国際医用画像総合展(ITEM2018)」(2018年4月13〜15日、パシフィコ横浜)では「夢のような創造科学と人にやさしい放射線医学」をメインテーマに約170社が出展し、事務局の発表によると3日間で延べ4万5705人が会場に足を運んだ。
今回の展示におけるトレンドの1つが「画像診断とAI(人工知能)の融合」だ。大手医療機器メーカーが会場内で相次いで新製品や新コンセプトなどを発表した。AI分野における各社の取り組みを中心に、同イベントの展示内容を紹介する。
2018年1月に東芝メディカルシステムズからキヤノンメディカルシステムズに社名変更され、今回がキヤノンメディカルシステムズとして初めての展示となった。同ブースでは、医療情報ソリューション「Abiertoシリーズ」やCT装置「Aquilionシリーズ」、次世代アンギオ(血管造影)システムの「Alphenix」などのモダリティ(医用画像機器)が展示されていた。
キヤノンメディカルシステムズは、ディープラーニング(深層学習)を用いた画像再構成(Deep Learning Reconstruction:DLR)に取り組んでいる。同社のブースでは、AIを用いたCT画像再構成技術の「AiCE(Advanced Intelligent Clear-IQ Engine:エース)」を紹介していた。
DLRとは、ノイズの多い画像とノイズの少ない画像(教師画像)のペアを学習データとしてその画質変換をディープラーニングで学習させることで、新たに得られた画像のノイズを除去する技術のこと。
AiCEはMBIR(Model-Based Iterative Reconstruction)の一種であるFIRST(Forward projected MBIR)の高品質データを教師画像に設定して、さまざまなノイズのパターンとFIRSTの各種のモデルデータを学習させる。これにより、高いノイズ低減効果と空間分解能の向上を図っている。
同社の説明員によると「AiCEでは、通常のMBIRでは困難だった低コントラスト領域の画質改善、低線量での安定した画質改善効果が期待できる。さらにMBIRに比べ計算量が少なくて済むため、3〜5倍速い画像再構成が可能になる」という。キヤノンメディカルシステムズでは、2017年に販売を開始した高精細CT装置「Aquilion Precision(アクイリオン プレシジョン)」からの搭載を予定している。
また、同社は2018年4月11日にNVIDIAとの提携を発表し、医療研究機関向けディープラーニング研究インフラの開発に取り組むことを発表している。NVIDIAのAIワークステーションである「NVIDIA DGX Station」を活用することで、キヤノンメディカルシステムズの医療情報統合管理システム「Abierto VNA」に蓄積された医療機関の膨大なデータの高速処理が可能にする。
また、展示ブースでは教師データを収集、生成するためのツールとなる「Deep Learning学習環境」(W.I.P.)を紹介した。
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