3Dプリンタや光学ドライブから“回転を直線運動に変換する機構”を学ぶ身近なモノから学ぶ機構設計“超”入門(2)(3/3 ページ)

» 2019年10月28日 10時00分 公開
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最近の光学ドライブに見る「送りネジ機構」

 ちなみに、最近の光学ドライブは小型化のためなのか、この機構を取り除いて、ユーザーが自分でディスクを軸に固定してトレーを押し込むタイプの製品が多いようです。

図15 最近新しく購入した外付け光学ドライブ図16 トレーを出した状態でディスクをパッチッとはめる 図15(左) 最近新しく購入した外付け光学ドライブ/図16(右) トレーを出した状態でディスクをパッチッとはめる[クリックで拡大]

 また、この製品には他にも回転を直線に変える機構がついていました。それはディスクのデータを読み込むためのユニットを動かす機構です。

図17 データを読み込むためのユニットを動かす機構 図17 データを読み込むためのユニットを動かす機構[クリックで拡大]

 読み込みユニットの横にモーターが付いていたので、「もしや?」と思い裏返してみると、ここに送りネジ機構が使われていました。ただナットではなく短いラックのような歯が切ってありバネで押し当ててあります。

図18 送りネジ機構。歯が切ってあるのが分かる 図18 送りネジ機構。歯が切ってあるのが分かる[クリックで拡大]

 CD、DVD、Blu-rayなどのディスクには、トラックと呼ばれる同心円状の信号配列があり、このトラックのピッチ(間隔)は、CDが1.60μm、DVDが0.74μm、Blu-rayが0.32μmになるそうです。送りネジ機構が採用された理由としては、配置やスペース、モーターのトルクなど、さまざまな要因が考えられますが、「細かいピッチの送りに対応するため」というのも、1つの理由なのではないかと想像できます。

 このように普段、何げなく使っていた光学ドライブですが、思った以上に複雑なことが内部で行われていることが分かりました。仕様通りの動きを実現しながら、快適性や安心・安全にも配慮した設計を行わなければならないという作り手の思いや苦労を想像しながら機構を眺めてみると、いろいろなことが見えてくるかと思います。



 以上、今回は“回転を直線に変える機構”について取り上げました。また次回、お会いしましょう! (次回に続く

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筆者プロフィール

久保田昌希

1981年長野県生まれ。大学卒業後、大手住宅メーカーの営業職に就くも退職。その後に就いた派遣コーディネーターの仕事で製造ラインの人員管理などを行い製造業に関わりを持つ。その中でもっと直接モノづくりに関わってみたい、自分で製品を生み出してみたいという思いが強くなり、リーマンショックを機に退職。職業訓練で3D CADや製図、旋盤やマシニングセンターの使い方を学んだ後、現在のプロノハーツに入社。比較的早い段階から3Dプリンタを自由に使える環境に身を置けたため、設計をしてはすぐに社内試作を繰り返し、お客さまからもたくさんのご指導を頂きながら、現在では医療機器からVRゴーグルまでさまざまな製品の開発、試作品の製作を受託。その経験を生かし子供たちに向けた3D CADや3Dプリンタの使い方講座なども行っている。


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