これらの連携の場においては、どのような情報をやりとりするかという情報モデルを定義する。これにより、それぞれのネットワークの中を通る情報については相互連携ができる状況にし、インダストリー4.0が目指しているオープンな通信を実現することを可能とする。
これはOPC UAがセキュアで効率的な通信手段、アクセス権限と相互運用性を通じたHow(通信手段)を提供するものであり、What(通信する情報)を定義する他の標準化組織と相互乗り入れを行うことが可能な仕組みとなっているからできることである。
これまでの装置メーカーや各標準化団体の独自の通信プロトコルの情報モデルではそれぞれの規格で通信を行う必要性があり、通信プロトコル間に壁が存在していた。これがさまざまな規格や機器が存在する製造現場などでの情報連携を阻む壁となっていたのである。OPC UAを活用することでこれらの壁を乗り越えることが可能になるということだ。
では、全ての通信規格がOPC UAに集約されるのかというと、そうではない。将来的にはそうした姿もあり得るが、現状ではOPC UAには高速さが求められないため、リアルタイム性が求められるモーション制御やセンサーネットワークなどの通信規格としてはそれほど向いていない。そのため、リアルタイム性が求められるところは別のネットワーク規格で、上位のITシステムとの連携ではOPC UAで、という適材適所な工場内ネットワークが構築されていく見込みである。
それでは、OPC UAの今後についてはどうなっていくのだろうか。当面は他のさまざまな機器や機械の通信規格との連携が進んでいくと見ている。
プラスチックとゴムなどの製造機械を扱う欧州の団体であるEuromap(ヨーロッパプラスチック・ ゴム産業用機械メーカー委員会)では射出成型機を中心に取出しロボットなどの周辺機器に関する通信規格「Euromap77、79、82、83」の規格などがある。その他、マシンビジョンやパワートレインなど、それぞれの産業機械が保有する通信プロトコルとの連携が進む見込みだ。
工作機械に関しては、VDWでCNC Systems向けの工作機械の内部に存在する各種データの情報モデルがリリースされている。また、VDWとOPC Foundationであらたに発足したワーキンググループであるUmati(Universal Machine Tool Interface)では工作機械と工場内ネットワークに接続されたMESやERP、その他クラウド上のシステムなどに対する外部接続向けの情報モデルも定義される。OPC UAとMTConnectのコラボレーションも発表されており、MTConnectとの相互乗り入れも進んでいく見込みである。
ここまで見てきたように、OPC UAの採用はインダストリー4.0の普及に合わせて全世界に広がりつつあり、国内でも対応を進める必要があるだろう。
第3回では、OPC UAの実際の活用方法と、セキュリティやTSNなどの新技術について解説する。
大釜亮介(おおがま りょうすけ)
株式会社マクニカ 戦略技術本部 先行技術開発統括部 IP開発部 IP2課 課長
日本最大級の技術商社であるマクニカでは、主力の半導体製品、ネットワーク製品販売に加え、IoT/AIソリューション事業やIP(Intellectual Property)販売事業なども展開している。IP事業の主力の1つが産業機械向けIPで、OPC UAに関してもさまざまな知見を持ち、ソフトウェア開発キットである「OPC-UA Server SDK」などを販売している。
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