スマート工場化など工場内でのIoT活用が広がる中、注目度を高めているのが「OPC UA」だ。本稿では、OPC UAの解説を中心に工場内ネットワークで何が起きようとしているのかを紹介する。第1回は工場内ネットワークの仕組みと、なぜ「OPC UA」が注目を集めているのかについて説明する。
スマート工場化など工場内でのIoT(モノのインターネット)活用が広がる中、注目度を高めているのが「OPC UA」だ。本稿では、OPC UAの解説を中心に工場内ネットワークで何が起きようとしているのかを紹介する。第1回は工場内ネットワークの仕組みと、なぜ「OPC UA」が注目を集めているのかについて説明する。
これまで工場ではネットワーク活用についてそれほど意識されてこなかったが、スマートファクトリー化などIoTを活用するにはネットワークが必須であり、どの通信技術をどのように活用するのかということが、成果を出すのに重要になってきている。
工場内ネットワークといっても、その種類は多種多様である。ただ使われる階層により大きく3つに分けることができる。「情報系ネットワーク」「コントローラー間ネットワーク」「フィールドネットワーク(フィールドバス)」である。
「情報系ネットワーク」は、ERP(Enterprise Resources Planning)システムなどの一般的な基幹システムやMES(Manufacturing Execution System、製造実行システム)、SCADA(Supervisory Control and Data Acquisition)システムなどを結ぶネットワークである。情報の抽象度が高いものを上位と置く場合、工場内ネットワークの中でも最上位に位置するものとなる。主に稼働状況や生産実績データなどの収集を目的とし、企業の経営情報や活動情報などと生産情報を組み合わせる役割を担う。一方で、人の判断などを支援する役割が中心であるため、リアルタイム応答性能や信頼性の要求値は低い。オフィスネットワークなどと呼ばれることもある。
「コントローラー間ネットワーク」は、制御機器であるPLC(Programmable Logic Controller、主にファクトリーオートメーションで利用)やDCS(Distributed Control System、主にプロセスオートメーションで利用)、産業用PC、NC(Numerical Control)装置、ロボット、ビジョンコントローラー、マシンビジョンカメラ、タッチパネル機器などを結ぶネットワークである。
情報系ネットワークの下位層に位置し、コントローラー同士が通信し生産ラインなどの制御を行ったり、情報系ネットワークに対し各種データを送ったりする。コントローラー同士が通信し全体の生産ライン間制御を行うため、リアルタイム応答性能やレスポンシビリティは、高い性能が要求される。
コントローラー間ネットワークに接続されている機器は、機器間通信をする必要があるが、数多くの通信規格が存在している、Ethernet I/P、EtherCAT、PROFINET、Modbus/TCPなどの規格が採用されている※)。また、情報系ネットワークとコントローラー間ネットワークの接続は、主にMESを介して行われるが、その通信プロトコルはベンダー独自のケースがほとんどである。
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「フィールドネットワーク」は、コントローラーがマスター機器となり、センサーやサーボモーター、インバータ、リモートI/O機器、安全装置I/O機器などがスレーブとして接続されたネットワークである。工場内ネットワークの中でも最も抽象度が低く、最下層に位置するネットワークである。コントローラーと接続される各種スレーブ機器の通信規格には、MECHATROLINK、Σ-LINK、CC-Link、Modbus、PROFIBUSなどがあり、これらが1つの工場でも複雑に絡み合いながら構成されている。
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