いまさら聞けない MECHATROLINK入門産業用ネットワーク技術解説(1/3 ページ)

スマートファクトリーをはじめとする工場内IoTが注目を集める中、産業用オープンネットワークへの関心は高まってきています。その中でモーション制御領域に強みを持ち「モーションフィールドネットワーク」ともいわれ、アジアを中心に導入が進んでいるのがMECHATROLINKです。本稿ではMECHATROLINKとは何か、どう活用すべきかについて、分かりやすく紹介します。

» 2017年05月18日 13時00分 公開
[MECHATROLINK協会MONOist]

MECHATROLINKとは?

 FA(ファクトリーオートメーション)業界にはさまざまな規格のネットワークが存在していますが、それぞれのネットワークには、特徴や強みがあります。装置メーカーやエンドユーザーは用途ごとに最適なネットワークを選定することで、自社装置や、製品の付加価値を向上させたり、工場の生産性向上を実現したりすることが可能となります。

 本稿で紹介するMECHATROLINKは、FAで採用される産業用ネットワークの1つの規格です。1980年後半に安川電機が、工作機械システムや産業用ロボットシステムの高機能や高性能化、高信頼性化を実現するために開発しました。2003年にはオープン化され、現在はMECHATROLINK協会(MECHATROLINK Members Association:MMA)が仕様策定や普及活動を行っています。

 管理団体であるMECHATROLINK協会は、幹事会社が中心となり運営しています。普及活動は、MECHATROLINK協会事務局が中心となって実施しており、メンバー数は2017年3月末時点で2980社となっています。メンバー数にはMECHATROLINK製品を開発している企業やMECHATROLINK製品を利用しているユーザーによって構成されています。

photo 図1 MECHATROLINK協会会員メンバー数推移(クリックで拡大)出典:MECHATROLINK協会

 最近ではアジア圏でのメンバー数が増加しており、2014年7月にはインド支部、2016年12月にはASEAN支部を立ち上げ、アジアやASEAN地域での普及活動、サポート活動などを進めています。また、普及活動の一環として各国で開催される展示会への出展や、主催セミナーの開催を行っています。

photo 図2 MECHATROLINK協会の本部、支部の構成(クリックで拡大)出典:MECHATROLINK協会

フィールドネットワークの位置付け

 さて、工場などで使用されるネットワークを階層ごとに定義すると以下のような階層に分類できます。

  • 工場間や工場内部の端末同士をつなげる(情報系LANネットワーク
  • 製造装置と製造装置の間をつなげる(コントローラー間ネットワーク
  • 製造装置などの内部で制御を実施するコントローラーと制御されるモーターや各種アクチュエーター、センサーなどをつなげる(フィールドネットワーク
photo 図3 FA用ネットワークの階層構造(クリックで拡大)出典:MECHATROLINK協会

 このように、工場などで使用されているネットワークは、その用途に適応した形態で階層構造を形成しています。

フィールドネットワークでのモーションコントロール

 フィールドネットワークは製造装置の内部で利用されており、製造装置が製品を生産する過程では、多くのモーションコントロールが必要となります。特に半導体製造装置や、その検査装置、射出成型機、工作機械などでは、精密なモーションコントロールが重要となり、製造物の加工精度、タクトタイムなど、製造装置の性能に直結する技術です。

 製造装置におけるモーションコントローラーは、フィールドネットワークを使ってサーボドライブやステッピングモータードライブ、インバータドライブ、リニアドライブなどを制御します。この時、モーションコントローラーは複数のモーションを協調して動作させることになりますが、複数のモーション要素を思い通りに協調動作させるためには、それぞれのモーション要素の処理実行タイミングの正確な同期制御が必要になります。また、モーションコントローラーが細かな指令を出すためには指令を高速、短時間に行う必要もあります。さらに、製造現場では環境要因として予期しないノイズなども多く発生しており、そのような環境においても正常に指令を伝達する必要があります。

 そのため、モーションコントロールが必要な製造装置で使用されるフィールドネットワークは、以下の3つのポイントが特に重視されます。

  1. 正確な同期性と定周期性
  2. 通信の高速性
  3. 高い信頼性

 MECHATROLINKがこれらの要求にどの様に応えているのかを引き続きご紹介します。

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