スマート工場化など工場内でのIoT活用が広がる中、注目度を高めているのが「OPC UA」である。本稿では、OPC UAの解説を中心に工場内ネットワークで何が起きようとしているのかを紹介する。第2回となる今回は、OPC UAの市場動向と普及状況について紹介する。
スマート工場化など工場内でのIoT(モノのインターネット)活用が広がる中、注目度を高めているのが「OPC UA」である。本連載では、OPC UAの解説を中心に工場内ネットワークで何が起きようとしているのかを紹介する。第2回となる今回は、OPC UAの市場動向と普及状況について紹介する。
OPCはもともとは「Object Linking and Embedding for Process Control」とされており、産業オートメーション分野やその他業界におけるデータの相互運用を行うための標準規格である。現在はこの規格は「OPC Classic」として扱われているが、同規格はWindows環境でしか利用できないという制約があった。そこでこれをもっと広範囲で利用できるようにしたのがOPC UA(Unified Architecture)となる。
OPC UAが注目を集めたきっかけとなったのは、ドイツのモノづくり革新プロジェクト「インダストリー4.0」で推奨通信プロトコルとして、指定されたからである。インダストリー4.0などの製造業のデジタル変革の動きを進めるには、IT(情報技術)とOT(制御技術)間の情報連携を実現する必要が出てくる。ただ、それぞれのプロトコルや情報の使用粒度などは大きく異なるために、共通の標準規格を当てはめるのが難しい状況があった。そこでOPC UAの持つ柔軟性が評価を受け、推奨規格に採用されたという流れである。
それでは、このOPC UAおよび関連機器の普及状況はどうなっているのだろうか。まず、インダストリー4.0のお膝元でもある欧州だが、基本的には工場内におけるITとOTの連携部分にはOPC UAを採用する動きがかなり進んでおり、デファクトスタンダードのポジションを勝ち取りつつある。既に「OPC UA対応」を製品の特徴として訴える段階は終わりつつあり、対応していて当たり前の世界になりつつある。
一方、中国でも「中国製造2025計画」の実現に向けて、デジタル工場の相互接続ネットワークの構築などを課題としており、OPC UAを国家規格として推奨するための動きが出ている。
日本国内および日本の産業用機器メーカーはOPC UAへの対応に今まではそれほど積極的ではなかった。しかし、これらの国際情勢から、グローバルで展開する産業機器メーカーは対応を検討せざるを得ない状況になってきており、2017年後半からは一気にOPC UA対応を広がってきている。対応を進めている企業の多くは、産業用ロボットや工作機械、射出成型機、その他産業機器のメーカーなどである。
OPCの仕様を開発、維持する団体であるOPC Foundationとインダストリー4.0をすすめるドイツのVDMA(ドイツ機械工業連盟)やVDW(ドイツ工作機械工業会)などの工業団体は、連携を強化しており、OPC UAの普及を積極的に推進している。この連携はドイツ国内に限った話ではなく、他の団体との連携も進んでいる状況だ。PLC(PLCopen)や工作機械(MTConnect)などのそれぞれの機器の標準規格との連携も進めている他、EtherCATやIO-Link、CC-Linkなどさまざまな産業用ネットワーク推進団体とも連携体制を構築している。
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