スマートコンストラクションの最新サービスには、シリコンバレーにあるベンチャー企業のSKYCATCHとの協業による、ドローンによる3次元測量を進化させた「EVERYDAY DRONE」や、日本のIoTインテグレーターFLECTが持つ移動体管理技術を活用したダンプトラックの運行効率化ソリューション「KOMATSU TRUCK VISION」などがある。さらに、面白法人カヤックと協業で行う、3D設計画面をAR表示してオペレーターが可視化できるようにする「Kom Eye AR」などがある。
さらに、2017年7月にはスマートコンストラクションの基盤となるプラットフォームのオープン化を発表した。建設生産プロセスのイノベーションを加速させるプラットフォーム「LANDLOG(ランドログ)」である※)。
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「ランドログ」は世界中の工事現場の「地形情報」、現場に関する全ての「機械」「人」「資材」「サプライヤー」の「コトデータ」を集積。そのビッグデータを活用し、コマツが提供するサービスだけでなく多くの人に参加してもらい、さまざまな新しいサービスを提供する。これにより、安全で生産性の高いスマートな未来の現場を実現することを目指す。このプラットフォームは、NTTドコモ、SAP、OPTiMの3社の協業により立ち上げたもので、今後さらに発展させていく考えだ。
さらに、大橋氏は「建設現場の未来は、社会の未来につながっている」と語る。例えば最先端の完全自動運転は、自動車だけでなく建設機械でも進んでおり、2008年からチリ、オーストラリア、カナダの鉱山に無人で稼働する大型のダンプトラックを商用ベースで導入するなど、既に世界の巨大鉱山で鉱山機械が無人運転を実現している。
一方、建設現場で稼働する建設機械の自動運転については、自動車と同じく社会との協調が必要だとする。コマツでは建設機械の「運転支援・自動運転」に関してレベル分け(レベル0〜5までの6段階)を行っている。建設機械でも自動車と同様に、最初は限定的な運転支援だったものが、AIや通信機能技術を活用することでそのレベルを高めているところである。現状の鉱山機械の自動運転は、レベル3〜4程度で、建設機械はまだレベル2(運転支援、範囲拡大)程度だが、目標のレベル5(高度化、判断自動)に向けて取り組みを速めているという。
建設機械の自動運転レベルが上がることにより、安全性、生産性が高まるだけでなく、知能を持った無人の建機が現場の変化を理解し、考えながら仕事をするという世界が実現する。大橋氏は「現場のICT建機が周囲を見ながら必要な情報、データをやりとりし、現場の建機と協調しながら最も安全で、効率的な動きを自ら考え、自律的に動く。さらに、無人の現場で起きていることを少し離れたところから確認することや、施工が進む様子をオフィスや出先からいつでも詳細に把握できる。これは、今国内で話題となっている働き方改革にも1つの答えを出すことにつながる」と述べた。
また、こうした技術の高度化により、建設現場を訪れず、遠い場所から建機を操る遠隔オペレーターという仕事も生まれてくることが予想される。遠隔操作の仕事を時間単位で請け負い、自宅で働くなどオペレーターの働き方も多様になり、ワークシェアリングも広がる可能性がある。「こうした取り組みは労働力不足に悩む建設現場に、新しい労働力を提供することにもなる。スマートコンストラクションは、建設現場だけでなく、人間の働き方や社会にも影響を与える」と大橋氏は強調した。
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