従来の指紋認証では、渦状紋や弓状紋など指紋の隆線の流れを用いるレベル1情報や、細線化した指紋の隆線、端点、分岐点を特徴点とする「マニューシャ」を用いるレベル2情報を使うことがほとんどだった。今回開発した技術で取得できるレベル3情報は、肉眼で見ることができない、指紋の中にある汗孔(かんこう)や隆線の太さなどを用いる。梅崎氏は「これまでにレベル3情報を用いた指紋認証は実用化されていないので、この開発成果は世界初といっていいだろう」と強調する。
アップル(Apple)が「iPhone」に採用して以降、スマートフォンへの指紋認証技術の採用が拡大している。スマートフォン採用が進む中で、センサーの小型化も進んでいるという。「レベル2情報であるマニューシャを使う指紋認証では、登録した指紋と認証しようとする指紋のマニューシャが12点一致すれば同一の指であると見なしてよいといわれている。しかしスマートフォンでは、実装面積やコストを考慮し、多くの指紋センサーが8×8mm角以下のサイズになっている。8×8mm角以下となると、取得可能なマニューシャは5〜10点になってしまい指紋認証ができなくなってしまう」(梅崎氏)。
今回開発した指紋センサーとアルゴリズムを使えば、マニューシャが2個程度しかとれない3.5mm角のセンサーサイズでも、レベル3情報である汗孔は50点以上取得できる。指紋の隆線や谷線の起伏、隆線上の汗孔などの位置を抽出し、その位置関係を個人の特徴として利用することで、従来よりも小さな指紋センサーでも十分な精度での認証が可能になるというわけだ。
DDS 研究開発担当取締役の林森太郎氏は「生体認証の需要はグローバルで拡大している。アップルが『iPhone X』で顔認証技術を採用したが、これは3Dセンサーにより高い認証精度を確保できたからだ。指紋認証も、今回開発した技術のようにより小型かつ高精度を実現できればさらに採用が広がるだろう」と語る。
なお、DDSは先行顧客への提案も始めており、早期に採用が決まれば開発技術を用いたスマートフォンが2019年春にも発表される可能性がある。また、スマートフォンで進んでいる全面ディスプレイ化への対応については「有機ELディスプレイであれば、ディスプレイの中に組み込むことも可能とみている」(林氏)という。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.