ザイリンクスは、新しい製品カテゴリーとなる「ACAP」を発表した。これまで同社が展開してきた製品とは異なるカテゴリーに位置付けられ、幅広いアプリケーションとワークロードの需要に適応可能とする。TSMCの7nmプロセスで開発されており、2018年内に開発を完了し、2019年に製品出荷を始める計画だ。
ザイリンクス(Xilinx)は2018年3月19日(米国時間)、新しい製品カテゴリーとなる「ACAP(Adaptive Compute Acceleration Platform:適応型演算プラットフォーム)」を発表した。これまで同社が展開してきたFPGAの「Virtex」「Kintex」「Artix」や、Armのプロセッサコアなどを集積したプログラマブルSoCである「Zynq」などとは異なる製品カテゴリーに位置付けられ、幅広いアプリケーションとワークロードの需要に適応可能とする。TSMCの7nmプロセスで開発されており、2018年内に開発を完了し、2019年に製品出荷を始める計画だ。
同社社長のビクター・ペン(Victor Peng)氏は「ACAPは、4年の年月と1500人のエンジニア、10億米ドルの研究開発費をかけて開発してきた。トランジスタ数は500億にのぼる」と語る。「Everest」というコードネームで呼ばれる、最初に出荷する製品ファミリーはAI(人工知能)の演算処理性能が、16nmプロセスを用いる最先端のハイエンドFPGA「Virtex UltraScale+」と比べて20倍以上になる。また5Gの通信帯域幅も同4倍を確保できるとする。「消費電力1W当たりの性能も10倍以上になる」(ペン氏)。
ACAPのブロックダイヤグラムは「ハードウェア(HW)/ソフトウェア(SW)プログラマブルエンジン」「次世代プログラマブルロジック」「アプリケーションプロセッサ」「リアルタイムプロセッサ」「HBM」「RF」「DAC/ADC」「SerDes」「GPIO」「メモリI/F(CCIXやDDRなど)」から構成されており、これらはNoC(ネットワークオンチップ)で接続されている。
ACAPの中で最も重要な役割を果たすのがHW/SWプログラマブルエンジンである。ペン氏は「今後爆発的に増大していくデータを、さまざまなアプリケーションに対して最適に処理できるようにするために開発した。ワークロードに対してミリ秒単位で動的に適応する、ソフトウェアレベルだけでなくハードウェアレベルでもプログラマブルな演算エンジンだ」と強調する。現時点で、詳細なアーキテクチャは不明だが「GPUやASICに比べて、より幅広いユースケースに対応する」(同氏)としている。例えば、個別化医療、ライブストリームイベント、IoTセンサーの解析、AI音声サービス、ソーシャルのビデオスクリーニング、金融リスクモデリングなどだ。
ペン氏は、ACAPの解説に併せて、ザイリンクスの今後注力する事業方針として「データセンターファースト」「重要市場の成長を加速」「適応型コンピューティング(ACAPのこと)を推進」の3つを挙げた。
これらの中で最も優先度が高いとしたのがデータセンターファーストだ。ザイリンクスは、データセンターやクラウドの技術者がFPGAを利用しやすいように、ソフトウェア開発スタックを充実させて対応力を高めている。「ザイリンクスにとって、データセンターは既に大きな市場であり、これからも大きくなる」(ペン氏)。
さまざまなアプリケーション、幅広いユースケースに対応するACAPだが、当初はデータセンター向けを中心に展開される可能性が高い。ACAPを用いたシステムの開発も、データセンターやクラウドの技術者にとって扱いやすいPythonやOpenCL、C/C++で行えるようなツールを用意している。これらのソフトウェアツールは、一部顧客にアーリーアクセス版を提供しているという。
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