ザイリンクスは、ARM Cortex-A9 MPCoreプロセッサをベースとするSoCに、同社28nm 7シリーズFPGAのプログラマブルロジックを統合したEPP(Extensible Processing Platform)製品ファミリ「Zynq-7000」を発表した
2011年3月1日、ザイリンクスは業界初となるエクステンシブルプロセッシングプラットフォーム(Extensible Processing Platform:EPP)の新ブランド「Zynq」および、EPP製品ファミリ「Zynq-7000」を発表した。
同製品ファミリは、ARM Cortex-A9 MPCoreプロセッサをベースとするSoCに、同社の次世代FPGA「Artix-7」および「Kintex-7」に用いられている28nmプログラマブルロジックを統合したもの。いうなれば“ASSPとFPGAのいいとこ取り”をしたような製品で、ザイリンクス ワールドワイド マーケティング、シニア バイスプレジデントのヴィンセント ラトフォード(Vincent Ratford)氏は「Zynqは従来のFPGAではない。イノベーションエンジン、クロスオーバーデバイスともいえるまったく新しいクラスの製品だ」と説明する。
また、ラトフォード氏は「これまでのFPGAを超えたマーケットを獲得できるものであり、従来のプロセッサやASIC/ASSP、FPGAが提供してきた以上のものを実現する製品だ」とし、現在の選択肢として主流のASIC/ASSP、2チップソリューションで妥協が必要だった部分(柔軟性やスケーラビリティ、リスク、コストなど)を解消し、「28nmで世界と勝負できる製品が作れるようになる」(ラトフォード氏)という。
今回発表された同製品ファミリのラインアップは、Artix-7をベースにした低コスト/低消費電力が特長の「Z-7010」「Z-7020」と、Kintex-7をベースにしたハイパフォーマンスが特長の「Z-7030」「Z-7040」の4つ。主に、車載ドライバアシスタント、インテリジェントビデオ監視、FA、航空宇宙/防衛、放送、次世代無線など、ハイエンドなプロセッシング性能が求められる組み込みシステムをターゲットとしている。
同製品ファミリは、いずれもNEONおよび倍精度浮動小数点エンジンを備えたARM Cortex-A9 MPCoreプロセッシングシステムを物理的に組み込んでおり、L1およびL2キャッシュやメモリコントローラ、一般的に採用されている各種ペリフェラルもハードワイヤードで備えている。プロセッシングシステムは電源投入時にブートし、プログラマブルロジックとは別にさまざまなOSを動作させることができる。さらに、プロセッシングシステムは、起動後に必要に応じてプログラマブルロジックをコンフィグレーションすることが可能とのこと。
また、プログラマブルロジックは、前述のとおり、同社最新の7シリーズFPGAをベースとしており、ユーザーがコンフィグレーションすることが可能で、インターコネクトブロックを介し、ユーザー定義のロジック機能をプロセッシングシステムに接続し、その性能と能力を拡張できるという。
なお、同社アライアンスプログラムの国内プレミアメンバーである東京エレクトロン デバイスが2011年2月16日に行ったプライベートカンファレンス「TEDプログラマブル・ソリューション 2011」の中でも、アームおよび同社が登壇し、EPPに関する講演を行っている。詳しくはレポート記事「MPUとの連携で存在感を強めるザイリンクスのFPGA」をご覧いただきたい。
ソフトウェア/ハードウェア開発者は、同社のISE Design Suiteとサードパーティ製ツールですでに実現されている組み込み開発手法と同じ方法で開発、デバッグ、実装が行えるとのこと。ソフトウェア開発環境には、従来のARMアーキテクチャ向け開発ツールが使用できるほか、同社が提供するEclipseベースのSDK、ARM Development Studio 5やARM RealView Development Suiteといったサードパーティ製の開発環境も使用可能だという。
同製品ファミリの最初の出荷は2011年の後半を予定しており、エンジニアリングサンプル品の出荷は2012年前半を予定しているとのこと。価格は数量とデバイスの選択によって異なるが、低価格帯の製品(Z-7010)の場合、15米ドル以下(初期量産価格)で提供される予定だという。
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