ホンダとトヨタ自動車のネオジム磁石が異なるのは、ネオジムの使用量だ。トヨタ自動車は、磁石の粒の表面と内部でネオジム濃度に差をつけた2層構造とすることでネオジムの使用量を減らした。従来の磁石はネオジムが粒全体に均等に分布していたが、熱処理によって粒の表面のネオジム濃度を高め、粒内部の濃度を下げる。これにより、ネオジムの使用量を低減しながら効率的に使用する。
ネオジムの濃度を下げた磁石の粒内部には、軽希土類のランタンとセリウムを1対3で混ぜた代替材料を用いる。一般に軽希土類は磁石の特性を低下させるが、特定の比率であれば耐熱性や保磁力を維持できることが分かった。ランタンとセリウムはネオジムの採掘で同時に調達することができ、産出量が豊富で材料コストが10分の1〜20分の1に下げられる。
軽希土類の採用によって材料ベースではコスト低減が見込まれるものの、生産プロセスのコストが現時点では見積もれていないとし、部品単位でのコスト低減効果については言及しなかった。「生産プロセスの“泣き所”となるのは、ネオジムの2層構造や磁石の微細な組織を安定して量産することだろう。関心のある磁石メーカーには相談していきたい」(トヨタ自動車 先進技術開発カンパニー 先端材料技術部 第5特命グループ長の庄司哲也氏)。
各国の規制や政府の後押しにより、自動車メーカー各社は電動車の投入を加速させる。トヨタ自動車は2030年に電動車(ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車)の販売を550万台、このうち電気自動車と燃料電池車で100万台をカバーする目標を立てている。
電動車の普及により、モーター用磁石の原料の3割を占めるネオジムの需要も大幅に増える。「最も楽観的な予測でも2025年には現在の使用量を上回り、ネオジムの供給は不足する。2035年にはさらに不足する」(庄司氏)とし、重希土類だけでなくネオジムの使用量削減が重要だと訴えた。
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