トヨタ自動車は、2030年に向けた電動化戦略を発表した。同年までにトヨタ自動車単独での販売台数をHVとPHVが450万台、EVとFCVが100万台とし電動車合計で550万台を見込む。
トヨタ自動車は2017年12月18日、東京都内で会見を開き、2030年に向けた電動化戦略を発表した。
電動化のロードマップとしては、パナソニックとの協業を発表した同月14日の会見でトヨタ自動車 代表取締役社長の豊田章男氏が、2030年に販売台数の50%をハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)でカバーする目標を既に示している。トヨタ自動車単独で、HVとPHVが450万台、EVとFCVが100万台とし電動車合計で550万台を見込む。
今回はさらに、2025年ごろまでにグローバルで販売する全車種を電動専用車もしくは電動グレード設定車とすることも発表した。これにより、パワートレインの設定がエンジンのみの車種はゼロとなる。
また、2020年の中国でのEV投入を機にラインアップを拡大し、日米欧インドなどグローバルで10車種以上のEVを投入する計画も示した。PHVやFCVも2020年代に商品ラインアップを拡充する。HVでは、トヨタハイブリッドシステム(THS II)の高性能化を図り、ハイパワータイプや簡易型、ハイエンド向けなどをそろえていく。
トヨタ自動車 副社長の寺師茂樹氏は会見で、年間の電動車販売台数550万台の達成に向けて「異次元の構えが必要」だと語った。トヨタ自動車の電動車の年間販売台数は、1997年に「プリウス」を発売して以降、20年かけて約150万台まで拡大した。2030年に向けては、現在の3倍以上の台数をこれまでの半分の期間で普及させなければならないため、寺師氏は“異次元”と表現した。
電動車の基幹部品の中でも、バッテリーは“異次元の進化”が迫られる。バッテリーの容量は、日産自動車のEV「リーフ」(40kWh)とプリウス(0.75kWh)を単純に比較しても50倍以上に増やす必要があり、質量としては20倍まで増える試算だという。「HVの何千万台分もバッテリーを生産するということだ。現状のHVの台数規模でも大変なPEVE(プライムアースEVエナジー、トヨタ自動車とパナソニックが共同出資で設立したバッテリー生産会社)には、さらに3倍の生産ラインが必要になるだろう」(寺師氏)と異次元ぶりを説明した。
異次元の規模が求められるバッテリーについて、生産面で対応するには初期投資やメンテナンスコストが避けられない。一方で、バッテリーの進化への対応も求められる。原料であるレアメタルの不足や価格高騰、使用済みバッテリーのリユースやリサイクルも電動車から切り離せない課題だ。「(これまでは)バッテリーがどんどん安くなるという前提のビジネスモデルは立てられなかった」(寺師氏)。
パナソニックとの協業によって、電動車の普及でネックとなっていたバッテリーの課題解決を加速していく。また、これまでHVで実施してきた、電池のリユースやレアメタルの抽出などリサイクル、定置型蓄電池としての再利用といった取り組みも拡大していく。
デンソーやマツダ、トヨタ自動車で設立した新会社「EV C.A.Spirit」の役割についても寺師氏は説明した。EV C.A.Spiritは、バッテリーをはじめモーターやバッテリーに関し、車両として必要な特性の要求を決めていくという。「その特性を決めてから、リチウムイオンバッテリーでどうするか、全固体電池でどうするか検討する。クルマとバッテリーのキャッチボールが必要だ」(寺師氏)。
電動化を推し進める中でも、年間の研究開発費は1兆円の水準を維持する。また、バッテリーに関する投資は2030年までに合計で1.5兆円に上る見通しだ。1.5兆円のうち、半分は生産に関する投資となる。
寺師氏は年間1兆円の研究開発費に関し「収益の中で回していくことを考えると、スクラップアンドビルドが必要だ。予算が多ければ多いほどいい訳ではない。成果を出せるように効果的に使って行く大きなチャレンジになる。社内のコンパクトカーカンパニーをみると、ダイハツ工業やスズキのようには利益が上がらない。アライアンスやカンパニー制を通して、リソースの使い方を学んでいく。その成果を1兆円をうまく使うことに生かしていきたい」と語った。
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