SAPジャパンは、デジタル変革に関連する製品やサービスを総括するブランド「SAP Leonardo」で重要な役割を果たすAIと機械学習に関する戦略について説明した。同社常務執行役員の宮田伸一氏は「企業向けITにおけるAIでSAPはトップランナーだ」と述べている。
SAPジャパンは2018年2月13日、東京都内で会見を開き、「SAP Leonardo」で重要な役割を果たすAI(人工知能)と機械学習に関する戦略について説明した。
SAP Leonardoは、AIやIoT(モノのインターネット)などデジタル変革に関連する製品やサービスを総括するブランドだ。ERPシステム「SAP S/4HANA」を中核とする現行の製品群が現業を走らせる(RuN)のに対し、SAP Leonardoはデザイン思考などを基に新しい価値を生み出す(Win)製品群に位置付けられる。このRunとWinのサイクルをトータルでサポートするため、2018年1月1日付で、SAPジャパンの常務執行役員 デジタルエンタープライズ事業副統括に就任したのが宮田伸一氏だ。
宮田氏は「70を超える製品群から成るSAP Leonardoにおいて、AIと関わる機械学習アプリケーションは重要な役割を果たしており、四半期単位で新しいコンポーネントも追加されるなど開発も活発に進んでいる。基幹システムと連携して機械学習アプリケーションを活用するためのソリューションも既に用意できており、これらは現在よくある取りあえずAIを試すといったフェーズではない、より実用的なものだ。そういった意味で、企業向けITにおけるAIでSAPはトップランナーだと考えている」と語る。
SAPが企業向けITにおけるAIでトップランナーとする理由は明確だ。「Googleは検索、Facebookはソーシャルというそれぞれの分野で圧倒的なユーザーデータがあり、それらを基にAIを開発している。世界全体のGDPの75%に相当する会計データとひも付く圧倒的なERPのシェアを持つSAPだからこそ、企業向けITに最適なAIを提供できる」(SAPジャパン プラットフォーム事業本部 エバンジェリストの松舘学氏)という。
会見では、グローバルで採用されているSAP Leonardの機械学習アプリケーションの事例を3つ紹介した。
1つ目は機械学習を活用したインテリジェント入金消込が可能な「SAP Cash Application」である。これまでの処理履歴を機械学習し、自動で入金消込の処理を行ってくれる。「4つのステップで設定するだけで入金消込の自動化が始められる。スイスのエネルギー企業Alpiqは、SAP Cash Applicationにより92%という入金消込の自動化率を達成している。松舘氏は「導入期間は数週間程度で済む。日本国内対応も進めており、実用化の見通しも立っている」と述べる。
2つ目は画像認識技術を用いた広告露出の自動統計ソリューションだ。アウディ(Audi)スポーツチームが、スポンサー企業のロゴ露出の頻度などを統計化するのに用いている。また、スタジアムなどの表示広告の効果測定、価格設定などにも利用可能だという。
3つ目は宝飾品ブランドのスワロフスキーの修理センターにおける商品照合のソリューションになる。スワロフスキーでは極めて多くの製品を展開しているため、修理相談のあった製品を分類する作業が大きな負荷になっていた。これを、機械学習に基づく画像認識技術を用いて分類を自動化し、顧客へのレスポンスを高めることに成功した。
なお、SAP Leonardoの機械学習アプリケーションやAI関連のAPIは、「SAP Leonardo Machine Learning」として、SAPのクラウドサービス「SAP Cloud Platform」から提供される。このSAP Cloud Platformのベースになるクラウドは、SAP自前のデータセンターを用いる場合と、「AWS」や「Microsoft Azure」、「Google Cloud Platform」といったパブリッククラウドを用いるクラウドファンドリー版に分かれているが、SAP Leonardo Machine Learningはクラウドファンドリー版で提供されるサービスだ。
現在、日本国内ではSAP Cloud Platformのクラウドファンドリー版はサービスが始まっていない。このため、今すぐSAP Leonardo Machine Learningを利用することはできないが「2018年内にはサービスインする予定なので、その段階から利用できるようになるだろう」(松舘氏)としている。
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