製造業のIoT活用が加速しデジタル変革への取り組みが広がりを見せている。しかし「何から手を付けるべきか分からない」と迷う企業も多い。SAPで多くの企業のデジタル変革やIoT活用支援を進めるSAP Labsの製造業担当 ソリューションマネジメントグローバルバイスプレジデントのマイク・ラッキー氏に話を聞いた。
SAPは、ドイツのインダストリー4.0や米国大手企業が設立したインダストリアル・インターネット・コンソーシアム(IIC)など、IoT(モノのインターネット)およびデジタル変革の中心企業の1つとなっている。2016年にはフィジカルデータとデジタルデータを結ぶ基盤「SAP Leonardo」をリリースしIoT領域で20億ユーロの投資を行うとしている。
製造業においてもIoT活用やデジタル変革の動きは加速しているが、実現における迷いを抱える企業は多い。その中で成功する企業のポイントにはどういうことがあるだろうか。SAP Labsの製造業担当 ソリューションマネジメントグローバルバイスプレジデントのマイク・ラッキー(Mike Lackey)氏に話を聞いた。
MONOist 製造業においてもIoTやデジタルトランスフォーメーションが大きな注目を集めていますが、製造業を取り巻く環境の変化についてどう考えていますか。
ラッキー氏 製造業を取り巻く環境は、エンドユーザーの動向も含めてデジタル技術により大きな変化を示している。例えば、ある製造業についての話だ。ある製品を開発し週に2500個の生産を行うとする。そして、いざ発売となった際、800万のフォロワーを持つセレブが製品についてツイートをした。するといきなり2万個以上の製品が売れてしまい、その後8カ月分におけるバックオーダーを抱えることになった。グローバルでビジネスを展開しているとこうした状況はいつでも起こり得る。製造業にとって、こういう事態に対応していくためにはIoTを含むデジタル技術を活用し新たなビジネスプロセスを構築していくことが必要になる。
ラッキー氏 一方で日本の製造業においては、こうしたビジネス環境の変化に加えて、人材に関する懸念が大きいような印象を受ける。少子高齢化の環境に加えて熟練技術者が引退などで減っていく中で、ワークフォースの将来像をどうするかということだ。将来的に、高度な技能を持った熟練技術者を今以上に確保し続けるのは難しいということが想定される。その中で熟練技術者の技能の一部をIoTを含めた新たな技術で代替していくという考えだ。
ただ、もしIoTを活用したスマートファクトリーを実現していくとしても最終的には全てのシステムを結び、デジタルサプライチェーンを実現する中で、全ての価値はビジネスシステム(基幹システム)などに戻ることになる。SAPはここで強みを持っている。
これに加えて、人やモノ、プロセスを結び付けていくことがIoTの価値である。そのためのIoTポートフォリオとして「SAP Leonardo」をリリースした。「SAP Leonardo」はフィジカルの世界の人やモノ、プロセスなどの情報をビジネスシステムに結び付ける1つの基盤である。IoT関連では20億ユーロの投資を行う計画を発表するなど、積極的な取り組みを進めていく。
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