物質・材料研究機構など7者は、超小型センサー素子であるMSS(膜型表面応力センサー)を用いた嗅覚IoTセンサーの業界標準化推進に向け公募型実証実験活動を行う「MSSフォーラム」を設立する。「2020年に約900億円が見込まれる」(NIMS 理事の長野裕子氏)という嗅覚センサー市場に向けて活動を加速させたい考え。
物質・材料研究機構(NIMS)、京セラ、大阪大学、NEC、住友精化、旭化成、スイスのNanoWorldは2017年10月4日、「MEMS SENSING & NETWORK SYSTEM 2017」(10月4〜6日、幕張メッセ)において、超小型センサー素子であるMSS(Membrane-type Surface stress Sensor:膜型表面応力センサー)を用いた嗅覚IoT(モノのインターネット)センサーの業界標準化推進に向け、公募型実証実験活動を行う「MSSフォーラム」を同年11月1日に設立すると発表した。「2020年に約900億円が見込まれる」(NIMS 理事の長野裕子氏)という嗅覚センサー市場に向けて活動を加速させたい考え。
「MSSフォーラム」の設立発表会の参加者。左から、NanoWorld プロジェクトマネージャーの秋山照伸氏、住友精化 ガス統括の村瀬繁樹氏、旭化成 研究・開発本部 技術政策室 室長 野崎貴司氏、NIMSの長野裕子氏、MSS開発者の吉川元起氏、大阪大学 産業科学研究所 教授の鷲尾隆氏、NEC データサイエンス研究所 所長の山田昭雄氏、京セラ メディカル開発センター 所長の吉田真氏MSSは、NIMS国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(MANA)のグループリーダーである吉川元起氏を中心とした国際共同研究によって2011年に開発されたセンサー素子である。MSSは、メンブレン部分に被覆してガス分子を吸着させる「感応膜」が、有機/無機を問わずさまざまな材料が利用可能であるため汎用性が非常に高く、香りやにおいの元となる多様なガス分子を検知できることを特徴としている。2011年の開発後、嗅覚センサーとしての基礎研究を経て、2015年には産官学共同で「MSSアライアンス」を設立して要素技術の研究開発を進めてきた。
MSSアライアンスは、1年目にコアテクノロジーパートナー6者による嗅覚IoTセンサーのクローズドな研究を進め、2年目は新たに旭化成が加わったコアテクノロジーパートナー7者とMSSの実証実験を行うアプリケーションバリデーションパートナー10者でクローズドな活動を実施している。今回設立するMSSフォーラムは、より多くの企業が嗅覚IoTセンサーを用いた実証実験を実施できるよう、公募型実証実験活動を行う「オープンな体制」(NIMS 外部連携部門長 青木芳夫氏)をとっている。
MSSフォーラムの募集要項は2017年10月16日に開示し、同年11月1日から10機関程度をめどに第1次募集を始める。2018年2月以降を予定している第2次募集は約20機関を見込んでいる。入会キットとしては、MSSアライアンスのもとで開発した第2世代標準計測モジュール、各種技術資料、標準計測モジュールマニュアル、計測データのローカルPC分析を行うためのツール、計測データの高度AI(人工知能)解析を実施するクラウドプラットフォーム利用権限、技術サポート窓口情報、商用化研究開発活動に向けたMSSアライアンス関連特許/MSSアライアンスメンバー保有技術提供の情報提供などがある。
MSSを用いた嗅覚IoTセンサーは、MSSと感応膜によるセンシングデータを、AIによって嗅覚として判定するライブラリやモデルから構成される。このAIがクラウドもしくはエッジコンピューティングによって動作することから、嗅覚“IoT”センサーと命名されている。
MSSを開発した吉川氏は「人間の五感に相当するセンサーのうち、嗅覚センサーの実現は最高難易度とされ“最後の砦”とも言われている。MSSは画期的なセンサー素子だが、その実力を発揮させるには周辺技術が必要だ。特に、嗅覚センサーのような新しくて複雑なチャレンジではより重要になる。MSSアライアンスでのクローズドな研究開発で嗅覚IoTセンサーについてかなりのノウハウを蓄積できた。今後はオープンな体制となるMSSフォーラムに参加してぜひいろいろ試していただきたい」と述べている。
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