東京大学は、蚊の嗅覚受容体を組み込んだ匂いセンサーを開発し、それを移動ロボットに搭載して、ヒトの汗の匂いでロボットを動かすことに成功した。画像探査ができない災害現場などで、不明者を探すセンサーとしての応用が期待される。
東京大学は2016年10月7日、蚊の嗅覚受容体を組み込んだ匂いセンサーを開発し、それを移動ロボットに搭載して、ヒトの汗の匂いでロボットを動かすことに成功したと発表した。同研究は、同大学生産技術研究所の竹内昌治教授と神奈川科学技術アカデミーの三澤宣雄研究員らの研究グループが、住友化学と共同で行った。
今回の研究では、蚊の触角に含まれている膜タンパク質で、ヒトの汗の匂い成分に特異的に反応する嗅覚受容体を、人工的に作った細胞膜中に埋め込んだ。これを匂いセンサーとし、無線装置に取り付けて、小型で携帯可能な移動ロボットに搭載した。
埋め込まれた嗅覚受容体は、ヒトの汗の匂い成分の1つとされるオクテノールに強く反応し、膜の導電率を変化させる。蚊は、この変化を読み取ってヒトの匂いを感知する。このロボットの周辺でオクテノールを染み込ませた紙をかざすと、センサーが反応して、ロボットが移動した。
この成果は、視界不良のため画像探査ができない災害現場などで、不明者を探すセンサーとしての応用が期待される。また、別の昆虫の嗅覚受容体を利用することで、麻薬や爆発物の検知に使える可能性もあるという。今後は、現在、最長約1時間のセンサー寿命を半日程度まで長持ちさせることを目指す。
これまでさまざまな匂いセンサーが世界各国で開発されてきたが、サイズや感度・選択性などにおいて、生物の嗅覚にはおよばないことが課題となっていた。
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