ミシマ いろいろ課題感があるなかで、製造業の将来像はどのようになっていくと思いますか? その中でMONOistを通じてどういう役割を果たすべきだ考えますか?
コバユミ 私は将来像とはちょっと違うかもしれないですが「現場を置いていかないこと」が一番大事なことだと考えています。現場に寄り添った情報提供は続けていきたいですね。その上で、変わらない環境で困っている人たちと一緒に解決方法を考えていけるようなことに取り組みたいです。
サイトー 私は、サンスーさんの課題感ではないですが、今後10年間のうちに定年、引退を迎える人たちの技術をどう残すかということが重要なポイントなのかなと考えています。クルマをはじめ、多くの業界で技術者の引退と技術承継が課題になっています。「職人技を見て盗む」という状況では間に合わないのが現実なので、今後便利な開発ツールなどが求められ、どう使いこなしていくかということが問われています。そういうツールや手法の発信は必要になってくると思います。
サンスー そうですね。時代の変化という意味では、ITとOT(制御技術)の融合ではないですが、さまざまな技術融合が進むと見ています。あらゆる産業や業界固有の技術、現場の技術群とITとの融合が進んでいき、境界線がなくなってきます。そうした中でIT側の論理だけに飲み込まれないように、製造業があくまでも主役としての立場であり続けられるような情報発信がしていきたいです。
ミシマ 私もサンスーさんと似ていますが、時代が大きく変化する状況にある中で「変わるべき領域」と「変えなくてもよい領域」というのを見極めて、必要な変わり方を伝えていきたいと思っています。変わる圧力が非常に強くなっている状況で、何でもかんでも変わらなきゃという感じになってきていますが、日本の製造業が今まで培ってきた強さの源泉というものがそれぞれの企業にあるはずです。それに応じた変わり方をうまく発信していきたいなと考えています。
ミシマ 今後、特に取り組みたいテーマや追いたい技術などはありますか?
サイトー 学生フォーミュラや技術伝承の話とも関連しますが、学生の読者を増やしていきたいですね。
サンスー 私も教育には興味があります。MONOistは読者対象を技術者としているので、どうしても企業活動に関わる話が中心になりますが、STEM(科学、技術、工学、数学)教育や大学の研究などもできる限り取り上げたいと思っています。AIやロボットで働き方が変わるのであれば、教育が変わっていく必要があります。そこにも果たすべき役割があるんじゃないかと考えています。
あとは、技術的には脳型プロセッサですね。コンピュータの発展を長らく支えてきたノイマン型コンピュータがついに一新される可能性が出てきたわけで、あらゆる情報処理が変わる可能性が生まれています。この新たな技術動向は追い続けていくつもりです。
コバユミ 私は、AR(拡張現実)とVR(仮想現実)が現実的に活用フェーズに入ろうとしていることに関心があります。いままでのCADを中心とした設計環境にない大きな変化だと思っています。平面的な3Dが本当に立体になる中で、設計環境をどのように変え、製品開発がどのように行いやすくなるのか冷静に追っていきたいですね。
ミシマ 私はMONOistとは少し離れるかもしれませんが、製造業が今取り組んでいる、IoTやAI、ロボットなどを活用したスマート化やオートメーション化の動きというのは、人手不足がさらに進む日本において、さまざまな産業で使える知見になるんじゃないかなと考えています。こうした知見を他の産業で活用する動きについては注目していきたいです。特に個人的に農業など1次産業については、多くの課題があると見ているので、いつかこういう領域にも貢献できればと考えています。
さて、編集部員による座談会はいかがだったでしょうか。編集記者は業界の応援団であり黒子であり、主役である製造業の皆さんを引き立てる役割に徹しているわけです。その彼らの熱量を少しだけお伝えするとともに、皆さんの今後に役立つ情報を盛り込みたいと考え将来像を意識した制作をさせていただきました。最後までお読みいただいて本当にありがとうございます。
MONOistは10周年に満足することなく、引き続き次の10年も日本のモノづくり、製造業を支え続けていきます。編集部一同、これまで以上に「変化の現場」に飛び込んでまいりますので、引き続きのご愛顧をよろしくお願い申し上げます。
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