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» 2017年09月04日 06時00分 公開

日系自動車メーカーの戦力逐次投入は何をもたらすのか和田憲一郎の電動化新時代!(25)(2/3 ページ)

[和田憲一郎(日本電動化研究所 代表取締役),MONOist]

問題は転換点の時間軸と物量

 なぜこのようにEV・PHEVの投入計画が違うのであろうか。EV・PHEVの位置付けが抜本的に変わる各市場の転換点(ターニングポイント)に対し、時間軸と市場に投入される物量のとらえ方が各社で違うのでは、と筆者は仮説を考えた。

 図2は、欧州、中国、米国、日本の各市場において、車両の販売量に占めるガソリンエンジン・ディーゼルエンジン車と、EV・PHEVの比率を推定したものである。各市場の伸び率及びEV・PHEVの伸び率を勘案して算出した。

図2 日米欧中の各市場におけるEV・PHEV比率の見通し(クリックして拡大) 出典:日本電動化研究所

 欧州において2040年でもガソリン車・ディーゼル車がゼロにならないのは、旧東ヨーロッパが含まれることや、欧州指令がでても順守しない地域もあることなどを配慮した。また、政策的に最も厳しい中国は、NEV規制などの影響により、EV・PHEVの伸びが著しいものの、市場全体も伸びていることから、その伸長度合は緩やかなものとなっている。もっとも、どこかのタイミングで強制的な規制が入る可能性はある。

 米国は車両販売そのものが伸び悩み始めており、依然としてピックアップトラックなどの大型車が多い中で、どれだけEV・PHEVに存在感を持たせられるかが勝負であろう。なお現時点でZEV規制のさらなる強化策は盛り込んでいない。日本は市場そのものが人口減少により徐々に縮小していく中で、EV・PHEVは緩やかな伸びになるのではと推察される。

 このような中、注目すべきはマーケットの位置付けが変わる転換点は、欧州と中国では2025年前後と考えられるのに対し、米国や日本は2035年前後と推定できる。本件は仮説であるが、欧州自動車メーカーや中国自動車メーカーはこのような視点から、EV大転換と捉え、まるで血液を入れ替えるがごとく大攻勢をかけてきているように見受ける。日本や米国を基準に考えると、そう慌てることもないとみることもできる。

 しかし、問題は市場の大きさと伸びである。欧州は2016年1464万台(前年同期比+6.8%)、2017年上半期も864万台(前年同期比+4.6%)と順調に推移している。中国も2016年2803万台(前年同期比+9%)、2017年上半期も1335万台(前年同期比+3.8%)と順調である。逆に米国は、2016年1755万台(前年同期比+0.4%)に対して、2017上半期は845万台(前年同期比−2.1%)と変調をきたしており、前年を上回りそうにない。

 米国の販売台数比率が約60%のスバルのように高い比率であれば、まずは米国をウォッチしていれば良いという考え方もあるが、他メーカーは慌てなくてもよいのであろうか。他自動車メーカーの米国販売比率はおおむね25〜35%の範囲であり、欧州と中国市場は避けて通れないように思える。

 筆者からみれば、このような少ない車種のEV・PHEVを開発し、順次投入していくやり方はどうしても“戦力の逐次投入”にみえてしまう。

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