一方、ウィーン条約に加盟していない日米は現時点では身動きが取れないように思える。しかし、そもそも米国はグーグル(現在の親会社はアルファベット)がネバダ州へのロビー活動によって公道での自動運転実証試験を実現するなど、民間企業が主導するデファクトスタンダードづくりの動きが鮮明だ。
そうした民間企業がデファクトスタンダードをつくっていく動きに対して、米国のデトロイト3の動きは、筆者の目には“極めてコンサバ”に映る。Ford Motor(フォード)はIoT(モノのインターネット)関連の旗振り役だったCEOのマーク・フィールズ氏の退任後、自動運転がらみの動きがスローダウンしているように思える。
こうした中、デファクトスタンダード競争の舞台は、半導体メーカーと自動車部品メーカーの連合体に移っている。2017年5月にカリフォルニア州サンノゼで行われた、IntelのAutonomous Driving Workshop、またNVIDIAのGPU Technology Coference(GTC)でも明らかになったように、半導体大手が自動運転に関するハードウェアとソフトウェア、SDK(ソフトウェア開発キット)、クラウド連携などをコーディネーションするようなプラットフォーム構想を打ち出している。そこに、Robert Bosch(ボッシュ)とContinental(コンチネンタル)が絡む。こうした状況については、既報(※1)をご参照頂きたい。
(※1)トヨタとNVIDIAの協業から見えてきた、ボッシュとコンチネンタルの戦争
また、もう1つの流れが、ライドシェアリングと自動運転との融合だ。ライドシェアリング大手のUberとLyftは、2016年4月に発足したロビー活動団体を通じて、自動運転関連の政策に関して米国議会に影響を及ぼし始めた。Uberは創業者の辞任や社内スキャンダルが表沙汰になるなど経営が揺れるが、ライドシェアリング大手は自社内に自動運転開発チームの拡充を急いでいる。
今回のシンポジウムでも、UberとLyftから事業開発ディレクターやジェネラルマネジャークラスがパネルディスカッションに登壇したものの、一般論としての受け答えがほとんどで、将来の事業構想に対する詳細な発言はなかった。
デファクトスタンダードの主役が変わり始めたのは明らかだが、混迷するトランプ政権の下、行政機関の色があせたAUVSIシンポジウムにおいて、米国における自動運転の将来が見えてこない。
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