アーサー・ディ・リトル・ジャパンは自動車分野のメディアラウンドテーブルを開き、消費者調査「自動車モビリティの未来」の最新版について説明した。
アーサー・ディ・リトル・ジャパンは2024年12月17日、自動車分野のメディアラウンドテーブルを開き、消費者調査「自動車モビリティの未来」の最新版について説明した。
同調査は2015年から継続しており、今回が4回目となる。人口統計や移動の在り方、販売チャネル、モビリティやパワートレインの種類、自動運転などの領域に焦点を当て、毎回の調査で共通の質問に新たなトピックを加えながら実施している。米国、欧州、中東、インド、中国、東南アジア、北東アジアの地域別に調査を行い、日本では1000人以上が回答した。
いわゆる「CASE」は過去の調査から継続して取り上げているが、当初よりも冷静に進捗している様子が示されたという。
C(コネクテッド) | ナビゲーションやエンターテインメント、安全、メンテナンスなどのコネクテッドサービスが標準装備として広く展開されているものの、通信インタフェースは車両オーナーのスマートフォンであることが少なくない。 |
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A(自動運転) | レベル4〜5の自動運転に対して先進国を中心に安全性の懸念が強く、関心は限定的。レベル2〜3の自動運転は、規制や環境の変更を必要とせずに多くのユーザーが望むメリットを提供できる。自動車メーカーはソフトウェアアーキテクチャの構築やEV(電気自動車)の開発などに投資を振り向けており、当初計画した自動化レベルを達成できていない。 |
S(シェアリング、サービス) | カーシェアリング市場は成長しているものの、事業者が収益化に苦戦している。アプリ経由のライドシェアは急成長し、多く利用されている。脱モータリゼーションの動きは、質の高い公共交通が整備された経済的に豊かな欧米の都市部に限定されている。 |
E(電動化) | バッテリーのコスト低下や走行可能距離の拡大、インフラ整備の進展により、EVは主流の技術の1つとなっている。特に、ノルウェーとオランダ、中国がEVの普及で先行している。米国は特にエンジン車にこだわる人が多く、HEV(ハイブリッド車)が好まれている。 |
日本の自動車利用状況について調べた。年間走行距離の平均は6843kmで、グローバル平均の1万3200kmの約半分だった。通勤距離もグローバル平均の24kmより短い15kmだという。在宅勤務の日数は平均週2.7日で、コロナ禍前後で横ばいだ。
現在、自動車を所持している回答者を対象に次のクルマをどのように入手したいか尋ねると、日本は欧米に比べて新車購入を希望する人が多かった。日本より新車志向が強いのは、調査対象の中では中国やインド、東南アジア、中東だ。欧米は中古車購入を挙げる人が3割を超えている。
国産ブランドを重視するかどうかを尋ねると、「極めて重要」「非常に重要」とする回答が日本では52%となった。この比率は自国に自動車メーカーのある米国やドイツを上回っており、中国に近い水準だという。国産ブランドはEVの普及でもカギを握るとしている。
公共交通が発達していない大都市圏では、ライドシェアやカーシェア、二輪車シェアなどの新しいモビリティサービスが盛んだ。1人で乗車するタイプのライドシェアは、海外では主流の交通モードになりつつある。日本ではカーシェアリングが普及しており、使ったことのある人も増えているが、ライドシェアを利用したことがあるという回答は少ない。海外ではカーシェアリングよりもライドシェアが普及している国が多く、日本は特殊な市場になっているという。
利用可能なモビリティサービスや公共交通サービスを考慮した際に自家用車を手放すことを考えるかと尋ねると、「いいえ(手放さない)」「未定」と考える人は欧米と同様に日本でも多かった。デフォルトの交通手段を自家用車以外にするかどうかを尋ねると、「いいえ(自家用車以外に変更しない)」とする回答は欧米が高い。日本や中国、東南アジアなどは3割前後で比較的低く、自家用車以外を主な交通手段にすることに抵抗が少ないことが分かった。ただ、日本は、自家用車がなくても移動できるが自家用車を手放したくない人が多いというユニークな市場だとしている。
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