メディアラウンドテーブルでは、2025年の自動車産業のトピックスについても紹介した。トピックスは下記の通り。
まずは新車販売の見通しだ。調査会社グローバルデータ(GlobalData)による2025年のパワートレイン別の需要予測によれば、市場停滞やトランプ政権誕生の影響により、2023年の予想と比べてEVの市場見通しは下方修正されている。代わりにPHEVシフトが見込まれるが、新車の総台数は減少する見通しだ。
EVシフトは進行するが、速度は緩やかになると予測する。購入者の税額控除が絞られたり、ZEV規制が緩和/撤廃されたりする可能性があるためだ。ただ、テスラのCEOであるイーロン・マスク氏がドナルド・トランプ氏の支持を表明したことからトランプ氏はEVへの反対姿勢を軟化させたとしている。
2024年の新車販売は、日米欧韓の自動車メーカーでは多くが前年と比べて減少しており、台数を伸ばすのはBYDや奇瑞汽車など中国勢が中心だった。フォードやスズキ、SUBARU(スバル)も前年と比べてプラスで、中国市場から撤退しているか、中国事業のウエイトが小さいことが共通点になっている。日米欧韓の自動車メーカーの苦戦は2025年も継続しそうだという。
米国では、EV停滞とHEVの普及に加えて、規制緩和によるロボタクシー市場の拡大がトレンドの1つになるという。ただ、規制が緩和される一方で、GM(General Motors)とCruiseがロボタクシー事業への投資をやめるなど、プレイヤーの広がりは期待できない。
インフレ抑制法の補助金はどこまで撤廃されるかが不透明だが、米国での電池や部材の製造など供給側に対する補助は基本的に継続する可能性が高い。需要側の補助金が絞られる可能性はある。
電動化を促進する各種規制は州レベルでは継続が見込まれるものの、連邦レベルでは緩和や撤廃に向かう可能性が高い。ただ、中長期的なEVシフトを否定するものではなく、緩やかに進んでいくとしている。「トランプ政権はEVを全て否定する立ち位置ではなく、米国のためになることは続けるという合理的なスタンスであることがポイントだ」(岡田氏)。
トランプ氏は、中国やメキシコ、カナダ、ブラジルやロシア、インドなどのBRICSをはじめとする幅広い国や地域で追加関税を課す可能性がある。メキシコや日本から米国に輸出する比率の高い日系自動車メーカーは大きな影響を受けそうだ。岡田氏は「HEVの現地生産化が進んでいるトヨタ自動車はネガティブな影響が小さい。ピックアップトラックなど大型車でも稼げる。一方、ホンダはHEV部品を日本から輸出しており、日産自動車はメキシコ生産の比率が高いので、HEVを含めた競争力を担保できるかどうか」とコメントした。
バイデン政権でも関税政策は強化されてきたがさらに厳格化しそうだ。どこからどこへ、何を輸出するのか、グローバル生産体制の最適化への見極めがより一層重要になる。「ただ、トランプ政権の任期や生産拠点を移す投資の重さ、リードタイムを考えると、生産拠点を大きく変える自動車メーカーはほとんどいないだろう。輸出と現地生産の両方で供給している自動車メーカーは輸出比率を減らしたり、工場の稼働率を踏まえた最適なロケーションに見直したりする動きがありそうだ」(岡田氏)。
中国に対しては、関税だけでなくソフトウェアの輸入禁止も検討されており、中国から米国への輸出は相当厳しくなると見込まれる。しかし、中国以外の自動車メーカーが、中国市場で現地のテック企業などのプレイヤーと協力して競争力強化を図る動きは今後も拡大しそうだ。中国発のテクノロジーが使えない地域とのバランスをどのようにとっていくかもポイントになる。
欧州は中国に対してEVの完成車レベルで関税をかけているが、電池やEEアーキテクチャまで依存度が高いのが現状だ。また、中国勢が欧州で電池の現地生産を開始し、追加関税の対象外であるPHEVやHEVの輸出を増やす動きも出ている。
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