「熱気がまったくない」「トランプ政権は自動運転をどう考えているのか分からない」。自動運転技術や米国の官民の最新動向を知るため毎年にぎわっていた、AUVSIのAutomated Vehicle Symposium。2017年は例年から一変して盛り上がりに欠け、一般論に終始する講演も増えてしまった。現地からのレポートをお送りする。
AUVSI(Association for Unmanned Vehicle Systems International)が主催する自動運転のシンポジウム「Automated Vehicle Symposium」の季節がまたやってきた。このシンポジウムは毎年、技術領域はもとより、Google親会社のAlphabet(アルファベット)やApple(アップル)などのIT企業が中核となって法整備もリードしてきた米国の最新動向を探るため、世界各地から大勢の業界関係者が詰めかける。
第6回目となった今回の参加者は約1400人。当然、会場のヒルトンホテル サンフランシスコ ユニオンスクエアは熱気ムンムンになることが予想された。
ところが、現実は大きく違った――
開催1カ月ほど前に公開された講演スケジュールを見て、筆者は「なんだか雲行きがおかしいな」と感じていた。なぜならば、メディアにも公開される一般講演に米国運輸省(DOT)と米国交通道路局(NHTSA)の名前がないのだ。2016年はDOTとNHTSAの両長官が講演し、自動運転ガイドライン作成に関する進捗状況を説明した。当初の予定ではガイドラインは同シンポジウム開催時期に合わせて2016年7月に公開され、その内容について世界各国の業界関係者が議論するはずだった。
ところが2016年2月以降、Tesla(テスラ)「モデルS」をはじめ“自動運転機能”というマーケティング手法で販売される複数のモデルで事故が起こった。自動運転の安全性、さらには自動運転の社会受容性についてメディアで大きく取り上げられ、社会情勢を鑑みた米国政府は自動運転ガイドラインを精査。結果的にガイドラインが公開されたのは9月に入ってからだった。
また、2016年のシンポジウムでNHTSAは、自動運転機能を有する量産車を対象とした今後3年間の検査方式、将来的な規制や法律にまで踏み込んだ技術的なレクチャーと質疑応答を行った。さらに、DOTはV2Xに関するレギュレーションも公開。自動運転ガイドラインを含め、これらはオバマ政権の期間内での駆け込み成立となった。
この他にも、DOTは前回のシンポジウムで自動運転を活用した次世代街づくり政策として「スマートシティー」構想を提唱した。全米各地からの50を超える公募を経て、最終的にオハイオ州コロンバスでの実施が決まった。最終選考から漏れた州や市も、地方行政として独自予算を活用し、DOTと連携したスマートシティーを政策に盛り込みたいとDOTに要望していた。
こうした前年の動きが、今回のシンポジウムでは皆無と言ってよいほど、きれいさっぱりなくなってしまったから驚きだ。それどころか、自動車メーカーやティア1サプライヤーの講演も無きに等しい状況だった。
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