日本を代表する農機メーカーのクボタは、農機にIoTを組み合わせる「スマート農業」で成果を上げている。このスマート農業によって「もうかる農業」を実現し、農家の「所得倍増」に貢献していくという。同社 専務執行役員 研究開発本部長の飯田聡氏に話を聞いた。
日本を代表する農機メーカーのクボタは、ディーゼルエンジンや建機、水回りの設備や水処理などの水環境事業も手掛けており、2016年度(2016年12月期)の売上高は1兆5961億円にのぼる。
現在クボタは、「食料」「水」「環境」を企業ミッションに掲げ、これらに新しい価値の創造をもたらすことで最も多くの顧客に信頼されるブランド「Global Major Brand(GMB)」となることを目指している。
このGMBの基礎になる「新しい価値の創造」を実現する上で重視しているのが、IoT(モノのインターネット)の活用である。既に、農機にIoTを組み合わせる「スマート農業」ではさまざまな形で成果を上げており、今後は事業としての展開拡大のフェーズに入る方針だ。そこで、クボタ 専務執行役員 研究開発本部長の飯田聡氏に、同社のIoT活用事例や、スマート農業で得られる新しい価値について聞いた。
ITmedia産業5メディア総力特集「IoTがもたらす製造業の革新」のメイン企画として本連載「製造業×IoT キーマンインタビュー」を実施しています。キーマンたちがどのようにIoTを捉え、どのような取り組みを進めているかを示すことで、共通項や違いを示し、製造業への指針をあぶり出します。
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MONOist GMBを掲げて新たな価値創造を目指していますが、その中でIoT活用はどのような役割を果たすものなのでしょうか。
飯田氏 これまでの当社は、製品を作ることでお客さんの要求を満たす、製品供給型企業の典型だった。しかし、これからの時代は、課題解決型企業に生まれ変わらなければならない。農機については、農法と機械を一体化したソリューションの提供により新しい価値を創造しようと考えた。IoT活用の原点は、この新たな価値創造にある。
GMBは、グローバルでの競合企業に質の面で対抗するとともに広く信頼されるブランドのことだ。新たな価値創造は質と信頼を勝ち得るために必要であり、IoTはあくまでそのためのツールという位置付けになる。
MONOist IoT活用によって進化を見せつつある「スマート農業」について教えてください。
飯田氏 現在、日本の農業は、農業人口が大幅に減少、高齢化する一方で、5ha以上のプロ農家(担い手農家)が増加している。全耕地面積の内、担い手農家が占める比率は現時点で58%だが、2020年には80%を占めるようになるという調査結果もある。
担い手農家は、求められる作物を、求められる時期に、求められる量だけ収穫したいと考えている。これに失敗すると、農作物の不足による販売機会の損失や、余剰の農作物の廃棄などが起こるからだ。そこで役立つのが「データ活用による営農計画」になる。
農業は、人力/畜力の第1世代、動力化/乗用化の第2世代、機械化一貫体系の第3世代と進んできた。次世代型農業であり、第4世代に当たるスマート農業は、先述した「データ活用による営農計画」と「自動化による超省力化」が柱になる。
そして、クボタが「データ活用による営農計画」向けに開発しているのが「KSAS(クボタスマートアグリシステム)」である。KSASのアプリケーションを組み込んだスマートフォン、農機、クラウドを通信でつなげたシステムになる。
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