MONOist KSASは「データ活用による営農計画」に当たりますが、両輪となる「自動化による超省力化」についても聞かせてください。
飯田氏 農機の自動化については、まずは運転操作のうちステアリングを自動化するオートステアから始めている。そして、2020年から有人監視下という条件での農機の自動化・無人化を進め、最終的には遠隔監視による完全無人化を果たしたいと考えている。
オートステアについては2015年春に畑作向けの大型トラクターから導入した。その次に直進キープ機能付きの田植え機を2016年秋にリリースしている。
実は、田植え機の運転操作は直進が難しく、熟練者でも作業ストレスが大きい。直進をキープできるオートステアは価値が高いが、既存のオートステアリング装置は高価で、性能面でも日本の水田に対応できないという課題があった。
そこで、直進キープ機能付きの田植え機は約10%の価格アップで済むような開発を進めた。補正情報利用式中波帯GPS(D-GPS)+姿勢計測ユニット(IMU)を組み合わせた制御システムで操舵用DCモーターを制御するシステムを開発した。300万円の本体価格に対して、40万円アップくらいで済む。
さらに有人監視下での自動化・無人化につながる協調作業トラクターや、遠隔監視による完全無人化につながる自動運転のトラクター、田植え機、コンバインとKSASの連携についても開発を進めている。
自動化とデータ農業は表裏一体の関係にある。そしてKSASは自動化のプラットフォームにもなるだろう。
MONOist 農業におけるIoT活用を進めていくにはさまざまな課題があるかと思います。
飯田氏 KSASであれIoTであれ自動化であれ、その目的はもうかる農業の実現だ。クボタとしては、従来比で単価を10〜20%、作付面積を30〜40%高められるようにして、農家の「所得倍増」に貢献したいと考えている。
その上での課題はソリューションの普及定着だろう。システムの改良、公的機関、行政との連携、農業データの標準化、他社システムとの連動も必要になるだろう。
農林水産省と慶応大学が、天候や地図、土壌、病害虫などのデータを農業に活用できるようにする「農業データ連携基盤」を構築するなど、国内各所で取り組みが始まっている。日本の農業が危機感を感じ、変わらざるを得ないと考えている証左ではないだろうか。
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