マイドットの実用化を進めていく上で重要なポイントが4つある。1つ目は、マイドットのランダムな粒子が作り出す微細な模様が、どの程度“唯一無二”なのかだ。手書きのドットだけでなく、機械を使って同じ筆圧で書き続けたドットであっても、全く同じ微細な模様ができてしまわないようでなければ、識別タグとして利用することは難しい。
会見では、手書きの1200点のドットを個別識別できるデモを披露して問題のないことを示した。さらに、石山氏は「機械で書いた約1万点のドットについても個別識別できることを確認している。手動でも機械でも、ドットのインク内の粒子が作り出す微細な模様を同じにすることはかなり難しい。実験で確認してはいないが、数十万点レベルまで個別識別が可能ではないかと見ている」と説明する。
2つ目は、マイドットの識別速度だ。石山氏は「使用するコンピュータの処理能力に依存する。デスクトップPCであれば、1000点のマイドットのデータベースから1点のマイドットを識別するのに1秒かかる。クラウドの処理能力を利用できるなら、1万点から1点の識別を1秒で完了できる」と語る。なお、手書きの1200点のドットを個別識別するデモでは、ノートPCを使っていたこともあり1点の識別に2秒弱かかっていた。
3つ目は、マイドットの撮影/識別の手軽さだ。今回の発表では、マイドットの撮影/識別に用いるカメラとして、市販の顕微鏡カメラを用いていた。これらの顕微鏡カメラは、イメージセンサーの画素数はVGA(640×480画素)レベルだが、10〜50/100倍のマクロズームが可能なレンズを備えている。
しかし実用面で言えば、多くの人が所有するカメラデバイスであるスマートフォンで撮影/識別できる方がより手軽さを高められる。「スマートフォンのカメラのレンズではマクロ性能が不足しているため、現時点では顕微鏡カメラが必要だ。しかし、ドットの直径を数mm程度まで大きくすれば、既に相当な画素数になっているスマートフォンのカメラの性能をそのまま生かせるようになる」(NECの説明員)という。
4つ目はセキュリティになる。会見では、スマートロックに対応する鍵としてマイドットを利用するデモを披露していたが、微細な模様を簡単に複製できるようでは、安全な識別タグとして利用することは難しい。石山氏は「通常のコピー機では微細な模様を再現できないので、一定レベルのセキュリティは確保できる」と述べている。
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