日立製作所は、簡便・無痛・高精度な乳がん検診を可能にする超音波計測技術を開発した。超音波を360度の方向から照射して自動スキャンを行うため、検査者の熟練度に依存せずに検査できる。
日立製作所は2017年5月24日、簡便・無痛・高精度な乳がん検診を可能にする超音波計測技術を開発したと発表した。超音波を360度の方向から照射して自動スキャンするため、検査者の熟練度に依存せずに検査できる。受診者はうつぶせになり、乳房を水で満たした検査容器に入れるのみで、痛みを伴わずに検査できる。
従来の超音波検診は、1方向から照射した超音波に対して、照射源の方向に反射した音波のみを取得していた。同技術では超音波を360度の方向から照射し、音波の反射を360度の方向から取得するリング状の超音波デバイスを用いて自動スキャンを行い、解析する。
音波の反射方向とその強度などを分析することで、腫瘍の硬さ、粘性、表面の粗さが計測可能だ。乳腺内の微小石灰化の可視化もできる。さらに、超音波画像の解析時間を7倍高速化する独自技術を組み合わせることで、検診の精度が向上し、計測時間を短縮する。
また、従来の超音波検診では、エコーゼリーを超音波デバイスに塗って乳房に押し当てていたが、同技術ではリング状の超音波デバイスと乳房の間を水で満たし、超音波を効率的に乳房に伝搬させる。検診の際、ウイルスなどの感染リスクをなくすため、超音波デバイスと乳房を容器で分離する構造を採用。容器が超音波の伝搬に与える影響を計測結果に反映する超音波計測技術を開発した。これにより、消毒・殺菌の時間を短縮し、安全で衛生的な検診を実現する。
同社では、イヌの臨床腫瘍を用いて5mmの微小な腫瘍の検出に成功した後、同年4月より北海道大学病院と共同で、ヒトの臨床腫瘍を用いた研究を開始。今後、共同研究を通じて、簡便・無痛・高精度な乳がん検診装置の実用化を目指すとしている。
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