パナソニックがイノベーション推進に向けたグループの研究開発戦略について説明。「IoTの時代を最大のチャンスと捉えて、新しい事業を作り出していく」(同社 代表取締役専務の宮部義幸氏)として、新設のビジネスイノベーション本部の活動により、現行37事業部と同等レベルに成長し得る事業を、数年内で複数創出していく方針を示した。
パナソニックは2017年4月19日、東京都内で会見を開き、イノベーション推進に向けたグループの研究開発戦略について説明。同社 代表取締役専務の宮部義幸氏は「IoT(モノのインターネット)の時代を最大のチャンスと捉えて、新しい事業を作り出していきたい」と語り、同年4月に新設したビジネスイノベーション本部の活動によって、年間売上高規模が数百億円に達する現行の37事業部と同等レベルに成長し得る事業を、数年内で複数創出していくという方針を示した。
同社は2017年4月1日付で、グループ全体に関わる研究開発やデザインを担ってきた「テクノロジー&デザイン部門」の名称を「イノベーション推進部門」に変更するとともに、同部門の中に新たにビジネスイノベーション本部を新設した。宮部氏は、これまでの技術・モノづくり・調達・IT革新総括担当に加えて、ビジネスイノベーション本部長に就任している。
そして、このビジネスイノベーション本部の副本部長に就任したのが、SAPジャパンでバイスプレジデント チーフイノベーションオフィサーを務めた馬場渉氏である。パナソニック ノースアメリカ 副社長 ビジネスイノベーション担当も兼任する馬場氏は、シリコンバレーに拠点を置いて、パナソニックのイノベーションを国内外で推進することを期待されている。コネクティッドソリューションズ社の社長に就任した、日本マイクロソフト元会長の樋口泰行氏とともに、サプライズ人事として話題になった(関連記事:パナソニックはIoTでもうけるために樋口氏を呼び戻した)。
今回の会見は、ビジネスイノベーション本部の本部長である宮部氏と、副本部長の馬場氏が登壇して進められた。
宮部氏はまず、カンパニー制導入後からこれまで続いてきた研究開発の役割分担について説明。「技術部門の前線化」をテーマに、本社技術部門の人材をカンパニーにシフトし、本社技術部門は非連続な技術と新規事業分野に軸足を置いてきた。しかし「各カンパニーの既存事業を伸ばすだけでは、これからのIoT時代に成長は見込めない。そこで、新規に事業を創出して成長を目指すためのビジネスイノベーション本部を新設することにした」(宮部氏)という。
既にIoT活用と言う観点では、家電や自動車、住宅、B2B事業などでその種が育ちつつある。その一例として、2017年3月に同社構内で行った自動運転コミュータの走行試験の様子などを見せた。
しかしこれらの取り組みは、各カンパニーで行っているものだ。同社が「クロスバリューイノベーション」として、カンパニーや事業部間の強みを掛け合わせての新事業の創出についてはスピード感が不足しているのが実情だ。
ビジネスイノベーション本部は、テクノロジーのイノベーションにとどまらず、さらに一歩踏み込んで本社主導でビジネスのイノベーションを推進するために設けられた組織だ。「全社テーマ」の考え方を基に、今後の成長エンジンになる新事業モデルの仮説を構築。さらに、その新事業を立ち上げるためのリソースを集めて“挑戦する”仕組みと体制を本社主導で整備する。
これまでのパナソニックの新事業といえば、売上高が億円単位になる=事業が立ち上がると同時に、カンパニー/事業部に移管するのが通例だった。今後の新事業は、事業部に移管するのではなく、事業部化を目指す次のプロセスに移行することになる。
これらの大きく育つ“種”については、既にプロジェクトが進行している。「近々に2つほど立ち上げる。従来のモノ売りとは異なり、パナソニックの有力なハードウェア製品を活用したサービス提供型の事業になる」(宮部氏)という。
さらにビジネスイノベーション本部では、社内からイノベーターを育成するとともに、ビジネスのイノベーションも起こすことを目指すプロジェクト「NEO」も立ち上げる。馬場氏は「イノベーターなくしてイノベーションはなく、そのイノベーションはビジネスにつなげることで大きな意味を持つ。NEOは単なる若手人材育成のプロジェクトではなく、新事業創出を目的としている。数多くの挑戦、そして失敗を重ねる中で、人材も、新事業も生み出せるはずだ」と強調する。
またビジネスイノベーション本部と同じく4月1日付で発足したコネクティッドソリューションズ社は、ビジネスイノベーション本部が目指すIoT活用や、モノ売りではないサービス提供を、主にB2B分野で推進していく方針を示している。このコネクティッドソリューションズ社との連携については「コネクティッドソリューションズ社は、研究開発組織として、技術本部を解体してイノベーションセンターに一本化した。このイノベーションセンターは、ビジネスイノベーション本部と表裏一体であり、密接な連携をとっていくことになる」(宮部氏)としている。
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