ルネサス エレクトロニクスは、「Renesas DEVCON JAPAN 2017」の開催に合わせて、ディープラーニングのアルゴリズムを同社のマイコンに実装できる技術「e-AI」を発表。スマートファクトリーへの適用をイメージしたデモ展示も披露した。
ルネサス エレクトロニクスは、プライベート展「Renesas DEVCON JAPAN 2017」(2017年4月11日)において、ディープラーニングのアルゴリズムを同社のマイコンに実装できる技術「e-AI」のスマートファクトリーへの適用をイメージしたデモ展示を披露した。
e-AIは、オープンソースの機械学習/ディープラーニングフレームワークの「Caffe」や「TensorFlow」で学習済みのニューラルネットワーク情報を、同社のMCU/MPUである「RZ」「RX」「RL78」「Renesas Synergy」に組み込める技術だ。MCU/MPUの開発環境「e2studio」で、学習済みのニューラルネットワーク情報をビルド可能な形式へ変換する「e-AIトランスレータ」、実装候補のMCU/MPUに合わせてROM/RAMへの実装サイズとアルゴリズムの推論実行処理時間を算出する「e-AIチェッカ」、組み込みシステム向けの機械学習/ディープラーニングフレームワーク「KAIBER」で学習した結果をMCU/MPUに組み込む「e-AIインポータ」という3つのプラグインから構成されている。「ディープラーニングによる学習済みアルゴリズムを、組み込み機器に用いられているマイコンに実装できるようにしたソリューションは業界初になる」(ルネサス エレクトロニクス 執行役員常務 兼 第二ソリューション事業本部本部長の横田善和氏)という。
e-AIのスマートファクトリーの展示は、ベルトコンベヤーの上をクルマをかたどった模型が流れているといシンプルなライン。このデモラインには3つのe-AIが組み込まれている。1つ目は、赤外線を使った変位センサーを用いた製品形状のセンシング。2つ目は、ベルトコンベヤーの駆動部に組み込んだ振動センサーでモニタリングする予防保全。3つ目は、変位センサーでベルト表面をモニタリングする異物検知となっている。
製品形状のセンシングは、産業機器向けイーサネット搭載マイコン「R-IN」で行っている。これは、2015年12月の「システムコントロールフェア(SCF)2015」などで紹介していた技術と同じだ(関連記事:第4次産業革命で必須となる“手足の頭脳”、ルネサスが人工知能付きデバイスを披露)。
今回発表したe-AIは予防保全と異物検知で活用されている。振動センサーでモニタリングする予防保全はRZで行っており、手動もしくは自動で加える振動状態から正常、警告、要点検の3種類の表示を行う。一方、変位センサーでベルト表面をモニタリングする異物検知は、異物としてベルト上に置かれているクリップの検知を、RZよりも処理能力の低いRXで行っていた。
e-AIは2017年5月下旬から機能限定版を、同年6月下旬から正式版を提供する予定。e-AIの価格は無料であり、開発環境のe2studioと、対応MPU/MCUであるRZ、RX、RL78、Renesas Synergyがあれば、CaffeやTensorFlowで開発したAIのアルゴリズムの実装を試せる。
なお、R-INについては、開発環境がe2studioとは異なるため、現時点では今回提供される3つのプラグインは利用できないという。
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