スマート工場実現に向けて、工場内で活用する産業用オープンネットワークが注目を集めている。その中で日本・アジアを中心に存在感を高めているのが、MECHATROLINK協会が推進する「MECHATROLINK(メカトロリンク)」である。
インダストリー4.0など、IoT(モノのインターネット)を活用したスマート工場の実現に大きな関心が集まっているが、その中でカギを握ると見られているのが産業用フィールドネットワークである。IoTは製造現場の末端情報を吸い上げて、クラウドなどの環境で分析し、さらにそれを現実世界にフィードバックさせることで価値を生み出す仕組みであるが、製造現場においてはその末端の手足を操る領域を産業用フィールドネットワークが担う。
産業用フィールドネットワークは、具体的には製造装置などの内部で使用されるモーターやセンサー、I/Oなどの各種コンポーネントとコントローラーをつなぐ通信ネットワークだ。IoTにおいては、現場情報をどのように取得し、そして分析して得た知見をどのように現場で表現するのか、という両面で産業用フィールドネットワークは大きな役割を担うといえる。
その産業用フィールドネットワークの1つの規格が「MECHATROLINK(メカトロリンク)」である。MECHATROLINKは、2003年に公開された日本発のオープンフィールドネットワーク。フィールドネットワークの中でも特に、モーターなどの動きに代表されるモーション(動き)を制御する仕組みが得意としており、「モーションフィールドネットワーク」とも位置付けられている。高速通信と同期性の保証が強みで、製造機械など高速、高精度な動きの制御で貢献している。
例えば、MECHATROLINK−IIIは、物理層にイーサネットを使用しており、伝送速度100mbps、伝送周期最小31.25μsecの高速化を実現している。通信制御をASICで行うことで、複雑な通信プロセスをASICが肩代わりし、ホストCPUに負担をかけないという強みを持つ。その他、通信仕様が全てWebサイトに公開されているオープンさや国際標準規格(SEMI規格、IEC規格、GB規格)で認証を取っている点なども評価を受けている。
IoT対応なども推進しており、通信帯域内に制御で使うサイクリック通信で使用する帯域に加え、メッセージ通信帯域を用意。上位ネットワーク系で必要な処理データの伝送を自由に行えるようにしている。さらに「メッセージ通信 中継コマンド」などの機能も用意し、フィールドネットワークより上位のネットワークとの通信を可能としている。
これらのMECHATROLINK規格の普及促進を図っているのがMECHATROLINK協会だ。MECHATROLINK協会には2017年1月末時点で2885社の企業が参加し、444のMECHATROLINK対応製品がリリースされている。MECHATROLINK協会 事務局代表の三輪卓也氏は「日本だけでなく中国をはじめとするアジア諸国で普及が進んでいる。業種では、半導体、液晶など最先端技術をはじめ、工作機械、板金加工、巻線機械、ロボット、食品機械、薬品検査など多くの装置に採用されている」と述べている。
MECHATROLINK協会は普及拡大のために、グローバルで各種活動を行っている。国内では主要展示会にとどまらず、さまざまな情報を発信している。直近では「オートメーションコンポーネンツフェア(ACF)」が開催された。「ACF」は、2年に1度開催されている制御技術の展示会「システムコントロールフェア(SCF)」のない年度にMECHATROLINK協会が主催している展示・セミナーイベントである。三輪氏は「日本各地での普及やユーザー企業の技術力のアピールなどを目的に開始した。従来は『MECHATROLINKフェア』としてきたが、IoTなどで異種環境の融合が進む中、オートメーション全般を対象とする意図でACFへと改称した」と思いを語っている。2016年度は既に2016年11月に大阪で開催した他、2017年2月17日には広島(広島市、広島産業会館)で開催した。
2016年度のACFでは、IoT活用によるオートメーションの進化などにも焦点を当てサブテーマとして「IoT化を加速するMECHATROLINKソリューション」を設定。基調講演には、日本IBM 理事で、インダストリーソリューション事業開発 製造・IoTソリューション事業部 事業部長の細和久氏が登壇し、「人工知能時代の新たな顧客価値創造 〜Watsonが変革する世界〜」をテーマに最新の人工知能活用の事例を紹介した。
IBMは人工知能「Watson」の産業実装に積極的に取り組んでおり、既に多くの成果を生み出しつつある。細氏は「金融や医療業界においては多くの成果が既に発表されているが、発表されているものだけでなくメディアや製造業、コールセンターなどでも多くの実績を残せている」と語る。
さらにAI(人工知能)技術については「将来のものとした捉え方が多いと思うが、実際に使用できる領域は拡大しており、多くの実績が既に生まれている。さらに、投資についてもAPI(Application Programming Interface)を通じて大きな投資なしに、手軽に利用することが可能となっている。AIで業務を支援するという時代に既に入りつつある」と細氏は強調した。
製造業に対しては「工場向けでは故障予知や品質向上などにIoTを活用する動きが活発化しているが、これをどうビジネス化するのかというところでAIが活躍する。一方で、あまり注目されていないが、熟練工の減少が進む中で技術や知見をどう継承していくか、という点でもAIは大きな役割を果たすと考えている。活用できる領域は多い」と細氏はAI活用についての考えを語った。
一方、ACFではユーザー企業の展示なども行われているが、MECHATROLINK協会の最新の動態展示などに加え、16社の展示が並んだ。以下、出展内容についてダイジェストでお伝えする。
アズビルは高精度位置計測センサー「K1Gシリーズ」を紹介。透明体の計測も可能でフィルムや巻物での生産ラインでの活用を訴求した。アルティマはFPGAでMECHATROLINKのIPコアを組み込んだソリューションを提案。FPGAによる産業機器開発の利点を紹介した。エニイワイヤは、MECHATROLINKの各バージョンに対応した省配線I/Oターミナルを出展。省配線化やIoT対応との親和性を訴えた。エム・システム技研は、スマート工場化が加速する中、通信機能付き表示灯「パトレイバー」やIoT端末「データマル」を紹介した。
オリエンタルモーターは、同社が得意とするステッピングモータードライバーでMECHATROLINK−IIIに対応した製品を出展。4軸での実演を行った。キーエンスは、位置決めから多軸同期まで可能なモーションユニットを提案。C言語にも対応し遠隔監視も容易に実現する。システックは、アルテラのARMベースCyclone V ST SoC FPGA を搭載した評価ボード「Sodia ボード」で駆動デモを実施した。テクノは、PCベースのモーションコントローラー「ファインモーション」を訴求。高い高速性を持つMECHATROLINKとの親和性を訴求した。
デジタルは、多くの導入実績を持つ表示器の知見を生かし、表示機情報をタブレットに表示する技術を紹介。遠隔監視での活用を訴えた。日機電装は、MECHATROLINK−III対応のダイレクトドライブモーター専用のサーボドライバー新製品を出展。2017年春の発売を控える。ネクスコム・ジャパンは、MECHATROLINK−III対応のPCベースIoTゲートウェイシリーズを出展した。ヒルシャー・ジャパンは、MECHATROLINK−III対応の通信アナライザーを出展。リアルタイムで遅延やジッタを計測し機器開発に貢献する。
安川コントロールは、MECHATROLINK−III対応の多軸位置決めコントローラーやMECHATROLINK対応ケーブルを紹介。低電圧でバッテリー駆動が可能なモータードライブも出展した。安川情報システムは、同社が推進する情報収集クラウドシステム「MMCloud」や、同システムで収集したデータを元に予兆保全を行う「MM Predict」を紹介した。安川電機は、アンプ一体化サーボモーターの参考出品を行った他、バッテリーレスサーボモーターを紹介した。その他、用途最適型のサーボモーターパック「FTシリーズ」を提案した。横河電機はMECHATROLINKに対応し、Linuxを採用したC言語コントローラーを紹介。ITとの親和性の高いC言語対応により遠隔監視を提案する。
ACFは、大阪会場、広島会場に次いで2017年2月24日には、金沢会場(金沢市、金沢流通会館)でも開催予定である。三輪氏は「MECHATROLINK協会は2018年に創立15周年を迎える。IoT時代を迎え産業用フィールドネットワークの価値は従来以上に高まっており、その価値をしっかり伝えていきたい」と述べている。
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提供:MECHATROLINK協会
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2017年3月21日