同社が技術資産の体系的な管理を開始した2000年ごろは基本的には紙ベースで行っていた。「製品開発に関するデータは何でも紙でファイルし、必要に応じてそれを見に行くという形で技術資産を管理していた。このやり方は、そこ行けば必ず見つかることと、手書きの絵などもファイルされており結構便利だった」(池上氏)という。
これを2005年ごろから電子データとして管理するようになった。具体的には、サーバ内にプロジェクトごとにファイルにためていくというやり方を採用した。だが、これではプロジェクトに関わった人は見つけられるが、そうでない人はたどり着けないという課題が生まれた。そこで、データベースを導入して技術資産を蓄積する活動を開始した。しかし、そこでは操作性などが問題となり「技術資産をためただけでなかなか使えないということでフォルダ管理にまた戻ってしまった」(池上氏)と管理の方法が定まらない状況について説明する。
それぞれのやり方の長所と短所を挙げると、紙ベースの管理は現物を目の前にすることで情報の有無が分かることがメリットだが、探すために時間がかかり場所も必要になる。ファイルサーバでのフォルダ管理は自席にいながら情報を探せ、自由に登録できるが、量が膨大になり、情報の確かさも不明で、知っている範ちゅうでしか探せない。データベースツールによる管理は自席で情報を探すことができ、管理された情報が見つかるものの、登録情報の精査と特別な操作が必要となることなどがデメリットとなっている。
そこで、同社では解決する手段として今までとは違うアプローチを模索することを決めた。具体的には以下の4つのポイントを意識した取り組みを進めた。
具体的には、既に蓄積している玉石混淆のデータを、手間をかけずにナレッジツールで使えるようにした他、蓄積するデータや情報の格納方法や内容の見直しをかけた。さらに今後は、蓄積、データ化、情報活用の流れにおける内容を工夫していく方針だ。さらに使いやすくなるようなシステムの構築を検討するという。
これらの取り組みにより、経験の浅い技術者とベテランとの情報格差解消による早期戦力化の実現を目指す。設計検証漏れや過去のトラブルの反映漏れを削減して手戻り防止と設計品質の向上、ナレッジ情報の検索時間短縮による業務効率アップなどを実現し、さらに技術伝承の仕組みの構築などを目指していくという。
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