印刷関連企業である理想科学工業は、柔軟なグローバル生産体制の構築に向け、生産管理システムを刷新。25年前に導入した自社製システムをパッケージシステムに置き換え、コスト削減と生産の可視化を実現し、グローバルニーズに即応する生産体制を確立する。
「日本がどうなってしまうか分からない。だからこそ人は理想を失ってはいけない。どんな時でも理想を貫いていこう」。理想科学工業(以下、理想科学)の創業者である羽山昇氏が創業時に掲げた理念だ。
理想科学は第二次世界大戦後すぐである1946年に創業した歴史ある印刷関連企業だ。もともとは謄写印刷(ガリ版)業として創業したが、その後エマルジョンインクの開発などで印刷機材メーカーとして成長した。開発ポリシーは「世界に類のないものを創る」。創業時の理念通り、高い“理想”を掲げ、技術力とともに独創的な発想で特徴のある製品を市場に送り出してきた。家庭用簡易印刷機「プリントゴッコ」や事務用印刷機「リソグラフ」などはヒット製品となり、「RISO」の名を広く世に知らしめた。
『ERP』関連記事: | |
---|---|
⇒ | 資料から見るERP導入の“大きな忘れもの” |
⇒ | 13の力を1つの大きな力に――総合力発揮のために旭化成が選んだERPシステム統合 |
現在はデジタル印刷機「リソグラフ」の他、高速カラープリンタ「オルフィス」を中心とし、これらのハードウェアの販売とともに、印刷材料などの生産・販売などをグローバルで行っている。海外子会社は23社あり、販売網は180以上の国や地域に及ぶ。
理想科学にとって現在、経営課題となっているのが、海外事業の拡大だ。国内市場の将来的な伸び悩みが予想される中、製造業にとって海外事業の成長は必須事項となりつつある。特に印刷関連事業では、売上高の海外比率が7割を超える企業も多いが、理想科学の海外比率は約35%。2016年3月31日までの3カ年を対象とした第5次中期計画「RISO Vision 16」でも、海外事業の拡大を目標に掲げている。そのため、グローバル展開に対応した体制作りは必須事項となっている。
ただ一方で今後のグローバル展開に対応する生産管理体制は十分とはいえない状況になっていたという。理想科学 取締役 製造本部副本部長である加野敏明氏は「生産管理システムは稼働後25年以上が経過し老朽化が進んでいた」と話す。
また情報システム部門を担当する、理想科学 コーポレート本部 情報システム部長の北澤義道氏は「生産管理システムは、業務拡大によるシステムの分散化が進み、ハードウェア、ソフトウェアともにコストが増えていた。また最新技術の利用や最新システムとの連携が困難で、メンテナンスの属人化も進み、今後企業運営を続けていく上でリスクとなる可能性があった」と話す。
理想科学は、国内に3工場、中国に4工場を抱えているが、2012年4月に新たにタイ工場を立ち上げ、現在は合計8工場で生産する。印刷機、プリンタなどの本体を製造するのが4工場で、残りの4工場ではそれらの消耗品などを生産している。各工場においてはそれぞれがほぼ別の生産管理システムを導入していた。
特にシステムが独立していた海外工場はシステムメンテナンスのため情報システム部員を海外に派遣し対応することもあった。また「国内の3工場については、システムを稼働しているオフィスコンピュータのサポート切れなどもあり、生産管理システムの刷新は待ったなしの状況だった」と北澤氏は語る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.