海外で働くことが希望でベルリンに行きましたが、初めての海外勤務ではありません。リクルートに新卒で入社して最初に担当を持った時も海外の案件で、ベトナムでのオフショア開発を担当しました。結婚情報アプリ「ゼクシィ」の大規模リニューアル案件で、5人ほどのベトナム人開発チームのリーダーを任されました。配属されて2カ月後にはベトナムに飛び、3カ月ほど現地で過ごしました。
ベトナムでは、メールやドキュメントは英語、ミーティングは日本語で発言して通訳にベトナム語に翻訳をしてもらう、というコミュ二ケーションをしていました。この時の経験からの学びは、ベルリンでの取り組みにおいて非常に生きています。伝えたいことを正確に伝えること、相手が伝えようとしていることを正確に理解すること、またそうするように努めることだと考えるようになりました。
母国語ではない言語で分かったつもりになっていると食い違いや手戻りが発生し、時間やお金が無駄になってしまいます。日本語であっても手違いは起こりうるので、必要以上に意識してコミュニケーションをとるよう心掛けています。
日本語のコミュニケーションは非常に高コンテキストです。「あうんの呼吸」や「以心伝心」という言葉があるように、言葉として表現しなくても、相手に理解される内容のほうが豊かなケースがあります。つまり、伝える努力やスキルが無くても、お互いに相手の意図を察し合うことでコミュニケーションが成立してしまいます。
しかし、英語圏のコミュニケーションは低コンテキストであり、言葉として表現された内容のみが意味を持ち、それ以外の内容は決して伝わることはありません。
ベルリンのように移民が多いコミュニティーでは、そもそもの文化的背景や宗教的理念など異なるバックグラウンドを持つ人たちとコミュニケーションとなるため、相手の文化背景を理解したコミュニケーションが必須です。前提となる共通認識が全く異なるので、言語として明文化し、共通認識を形成していかなければなりませんでした。
言葉でうまく説明できない場合には、ホワイトボードに図を書いて説明しました。エンジニアの場合、データフローやアーキテクチャなどの説明は図を使った方がスムーズにできるケースの方が多かったです。英語で文章を組み立てられなくても、図と単語を並べるだけでも通じます。大切なことは、お互いの認識をすり合わせることです。
相手もプロフェッショナルとしてプロダクトをより良い方向に持っていくという前提があるので、たどたどしい英語でも「お前が言いたいのはこういうことか?」とくみ取ろうとしてくれます。英語力を向上させる努力も続けました。帰国直前には、チームメンバーから英語もうまくなったね、と言われたのはうれしかったです。
次回は、ベルリンでハイモビリティが開発していたライブラリの詳細を説明していきます。
別府 多久哉(べっぷ たくや)
リクルートテクノロジーズ ITマネジメント統括部 ディベロップメント2部所属
2014年新卒入社。社内研究機関であるATL(Advanced Technology Lab)を経て、現在はリクルートグループのビジネス高速化に向け、DevOps組織の推進に取り組んでいる。
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