さまざまな企業や勢力がIoTを目指していますが、残念ながら勢力ごとの対話はほぼ存在していません。Web技術を共通言語とし、IoTを「WoT(Web of Things)」とすることで妥協点を見いだそうという動きはありますが、成功するかは不透明と言わざるを得ません。
収益の匂いに引かれて、大きな勢力がIoT(モノのインターネット)に集まってきています。サプライチェーンの上流からは、半導体企業がモノ向けの小型マイクロコントローラーユニット(MCU)、ハブ向けのエネルギー効率に優れたSoC、クラウド・データ・センター向けの強力なアクセラレータ、IoTの基礎をなす無数のハードウェア部品を動かしています。
反対側からは、エンタープライズIT業界の巨人が、膨大な数のモノからのデータを融合し、応答を構築し、実行を指令するためのクラウドアプリケーションを開発できるフレームワークづくりを進めています。そして、その中間においては、ネットワーク業界の勢力が、これらの新しい非対称ネットワークを理解し、クラウド、ハブ、エンドポイントと関連付けようと必死に努力しています。
残念ながら、これらの勢力間には対話がありません。
その結果、システム開発者は、全く異なる異なる技術、語彙(ごい)、前提、さらにはIoTのビジョンが絡み合う状況に直面しています。「だからこそ手付かずの大きな機会があるということです」と熱く語るのは、ハードウェア・インキュベーターのLemnosLabs社パートナーであるEricKlein氏です。しかし、IoTを応用したいアプリケーションを本業とする開発者が領域を超えて取り組もうとしても、「各領域の専門家向けのツールを使用せざる得ないため作業が滞ります」とKlein氏は嘆きます。
ARMの最高技術責任者(CTO)Mike Muller氏は、最近のARM TechConの基調講演で、そうした課題の1つとしてセキュリティの例を示しました。「課題について、エンジニアの観点から想像すべきです。IoTは、セキュリティ未経験の組み込み設計者に対し、1ドルのMCUをインターネットのあらゆる脅威から防御することを求めているのです」(Muller氏)
「IoTアプリケーション開発は、アプリケーションアルゴリズム、エンベデッドシステムとハードウェア、短距離パケット無線、インターネットプロトコル、エンタープライズIT環境と全てをマスターした博識家にのみ任せるべき」などという人はいません。
そのため、これら領域のベンダーは、主にアプリケーション専門家であるエンジニアに向けて単一の開発環境を構築するため、自社プラットフォームを拡張しています。IoTのあるべき姿についての認識を共有していないにもかかわらず、それらのプラットフォームは技術的にはかなり信じ難い発想に収束しつつあるようです。それはワールド・ワイド・ウェブ(World Wide Web)です。
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