今回のSEMICON Japan 2016では、全体で72台の装置を持ち込んで実際に稼働デモを行った。例えば、リソグラフィー工程のデモでは、コーター、マスクレス露光機、ディベロッパー、3D顕微鏡での検査、という4つの工程を4台の機器で実施。10〜15分程度で実際にリソグラフィーを行い、パターンが書き込まれていることを示した。会場は非常に埃が多く飛ぶ環境だが、密閉搬送容器により問題なくパターニングができていた。
一台一台の機器は、150〜400W程度で家庭用やオフィス用の通常電源で稼働が可能である。露光装置の光源は紫外線LEDを使用しており、縮小式のレンズを用いることでマスク無しで露光が可能とした。また、コーターで活用するスピンコーティングは小型のウエハーを用いるミニマルシリーズでは十分な遠心力が得られず利用できないとも思われてきたが、ウエハーの端を丸めることで液を飛ばしやすくしコーティング可能とした。これらのように、さまざまな工夫を積み重ねて、現実の使用レベルに近づけてきている。
ミニマルファブの特徴の1つが共通の筐体となる。筐体や機器内配線など設計の基本的な形を規定してしまうことで、開発費や開発リードタイムなどの削減を実現できる。
SEMICON Japan 2016では、2016年度(平成28年度)戦略的基盤技術高度化支援事業にも選ばれている「マイクロ波励起水中気泡プラズマによるレジスト膜除去技術」を組み込んだミニマルシリーズなども参考出展。加藤氏は「大学で研究されている先進技術を現実の市場で利用するレベルにするまでは従来は何年もかかっていたが、ミニマルシリーズでは、投資規模が小さい点や筐体や基本の形が決まっているため開発リードタイムも大幅に削減できるという利点がある。先進技術を搭載した製品をいち早く世に送り出せる可能性がある」とミニマルファブの利点を語る。
会場ではさらにディスコブースとエアシューターによる搬送システムを結び、密閉搬送容器により保護されている利点を生かして、ブース間搬送を行うデモなども実施し、注目を集めた。加藤氏は「オフィス環境での生産をイメージした場合、他のフロアなどと共同で生産するような場面も出てくる。そういう場合にも密閉搬送容器を使用しているために簡単に搬送可能だ。メガファブであれば考えられないような作り方も実現できる」と述べている。
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