慶應義塾大学は、老化制御因子として期待されるニコチンアミド・モノヌクレオチド(NMN)をヒトへ投与する臨床研究を開始する。ヒトでのNMNの安全性や体内動態が確認されれば、加齢に伴う疾病の予防や治療に役立つという。
慶應義塾大学は2016年7月11日、世界で初めて、老化制御因子として期待されるNicotinamide mononucleotide(ニコチンアミド・モノヌクレオチド:NMN)をヒトへ投与する臨床研究を開始すると発表した。この臨床研究は、同大学医学部内科学教室、眼科学教室、薬理学教室と米ワシントン大学医学部の研究グループが実施する。
慶應義塾大学医学部とNMNの研究で世界をリードする米ワシントン大学医学部は、老化、長寿、代謝疾患研究における共同研究協力を推進するため、2015年11月20日に5年間の学術連携協定を締結した。
同研究グループは、加速する高齢化社会を見据え、加齢とともに増える疾病の予防を目指したさまざまな試みを行ってきた。そして最近の研究から、体内に元来存在しているNicotinamide Adenine Dinucleotide(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド:NAD)が加齢とともにさまざまな臓器で減少し、それが糖尿病などの病因になることが分かってきた。NADは長寿に関わるとされる「サーチュイン」という分子を活性化することが知られており、このNADを体内で作るための材料の1つがNMNだ。
また、これまでの研究から、NMNを動物に与えるとさまざまな臓器でNADが増加し、加齢に伴って生じる疾病が抑えられることが明らかとなっている。しかしヒトでは、NMNが臓器に対してどのような影響を与えるのか、詳しく分かっていない。
そこで同研究グループは、NMNをヒトに安全に投与することができるか(安全性)、またNMNが人体においてどのように吸収されNADなどに変換されていくのか(体内動態)を調べるため、臨床研究を行うことにした。この研究では、40歳以上60歳以下の健康な男性10人を対象に、研究期間中、同じ人に異なる量のNMNを摂取してもらい、生理学的検査や血液検査の変化から、NMN投与の安全性と体内動態に関して検討する。
この研究によって、NMNのヒトにおける安全性や体内動態が確認されれば、将来的に加齢に伴って生じる疾病の発症予防や治療に役立つことが期待されるとしている。なお、同臨床研究は、NMNの医薬品としての開発を目的とする治験ではなく、学術的知見を得ることを目的に実施されるという。また、慶應義塾大学、同大学病院による直接の被験者募集は行っていない。
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