上智大学は軽量化でライバルとの差別化を図る。「エンジンにこだわっても、実際のコースで性能を使いきるのは難しい。一方で軽量化はコーナリングや加速性能にダイレクトに効果がある」(上智大学チーム)とし、車体や足回り、エンジンに至るまで軽量化を図っている。
同チームは2014年の参戦車両の重量が210kg、2015年は180kgと軽量化に成功し、2016年の参戦車両の重量は174kgとなった。早稲田大学の車両重量は245kg、横浜国立大学は215kgなので、比較してもかなり軽量な車両だといえる。
車体は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を採用したモノコックで、重量は17kgだ。フレームのボディと比較してねじり剛性は最大7倍に向上できるとしている。タイヤやホイールは小径化し、従来比55%の軽量化を実現した。重量を低減するだけでなく、タイヤの性能を限界まで使いやすくなるという。足回り部品の1つであるアップライトは、アルミニウムよりも軽量化でき、強度も向上するマグネシウム鋳造製とし、従来比26%の重量低減を図った。
また、上智大学は2013年から軽量化を目的に単気筒エンジンを採用している。4気筒エンジンと比較して重量を30kg削減できるが、出力が45%低下してしまう。これに対し、2015年からは単気筒エンジンにターボチャージャーを組み合わせ、20%の出力増を図っている。
2015年までエースドライバーだったメンバーが大学を卒業したため、横浜国立大学はドライバー不足に陥っていた。「ドライバーのなり手が少なく、苦労している。学生フォーミュラの車両は乗用車とは異なる運転感覚なので、運転免許さえあれば速く走れるわけではない。ドライバーの習熟度によってはラップタイムが4秒も差がついてしまう」(横浜国立大学チーム)。
2015年まではエースドライバーの運転を基準に参戦車両を進化させてきたが、今大会からはそのエースドライバーよりも運転技術が未熟なドライバーがステアリングを握る。さらに、担当する種目ごとにドライバーの技量に差がある。こうしたチーム事情を踏まえて、今大会からは運転技能の習熟に関係なく、運転しやすい車両とすることを目指した。
同チームでは、車両挙動の改善や、ドライバーの操作に対する即応性や正確な応答、適正なフィードバック、タイヤのグリップ向上に重点を置いて今大会の参戦車両を開発。パワートレインは、駆動力がアクセル操作に対して滑らかに変化するようにし、アクセルの踏み始めの駆動力が早く立ち上がるようにした。これにより、ドライバーの意図通りの加速を実現したという。また、リアウィングを搭載してダウンフォースを発生しやすくした。
どのドライバーでも運転しやすくなっているかどうかは、市販のカートと参戦車両を運転したタイムを比較して確認した。市販のカートのタイム差が、参戦車両では縮まっているという。また、ドライバーのインプレッションを基に、運転しやすさを追求して調整した。
全日本学生フォーミュラ大会では、車検の他、デザインや年産1000台を想定したコスト、0〜75mの加速やスキッドパッド、複雑なコースの走行タイム、燃費性能などさまざまな面で車両が評価される。2カ月後の本番に向けて、各チームとも準備を急いでいる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.