今回発表したオメガスペースの最大の特徴は「VR空間の複数人同時体験」である。これを実現したブレイクスルーとして神部氏が挙げたのが米国ベンチャー・Oculus(オキュラス)の登場だ。「それまでは4面CAVEのような大掛かりなシステムで、1人しかVR空間を体験できなかった。HMDには複数人同時体験の可能性はあったが、重い、解像度が低い、視野角が狭い、高価といったこともあって不人気だった。HMDのこれらの課題を一気に解決したのがオキュラスだ」(同氏)。
実際に2010年ごろに売れていたVR用のHMD「Visette 45」とオキュラスが2016年6月に量産発売した「Oculus Rift」や、HTCが発売した「HTC Vive」を比較すると性能が全く異なることが分かるだろう。また、VRの質を高める意味でも、Visette 45で60Hz未満だった更新レートが90Hzに高まっていることが重要だという。
そして高性能なHMDの登場を「VR空間の複数人同時体験を実現する千載一遇のチャンス」と見た神部氏はオメガシップの開発を決めた。オメガシップでは、Oculus RiftやHTC ViveなどのHMDを使ってVR空間を体験する人をプレーヤーと呼ぶ。プレーヤーがVR空間を体験している間は、現実空間のことを分からなくなる上に、VR空間の管理も行えない。そこで、ナビゲータと呼ぶ役割を設定し、プレーヤーがVR空間を体験中にその管理を行うこととした。また、プレーヤーがVR空間を体験する際に、通常の机だといすから転がり落ちるなどの可能性がある。そこで安全を確保するために専用の机も開発した。
開発で高いハードルになったのは、ナビゲータや複数人のプレーヤーの間で遅延を感じることなくVR空間を体験できるようにするためのネットワーク接続機能の開発だという。また、オメガシップの重要な要素として、現在開発を進めているのがVR空間を体験中の人を示すアバターである。
神部氏は「汎用のVRシステムで、複数人でVR空間を同時体験できるのは当社のオメガシップが初めてであり、業界に大きなインパクトを与えられると思う」と述べている。
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