もちろん、2008年に起こったリーマンショックがじわじわと経営を圧迫し、その後マツダが「CX-5」で息を吹き返すまでの間、ロータリーエンジンに関する表立った研究開発を凍結してしまったという懐事情も大きく関係したでしょう。先行開発というものがとかく経営の犠牲になりがちなのは、想像に難くありません。
その黒歴史を経て、今好調な経営をにおわせるマツダが高らかに宣言したこと。それが他ならぬ「ロータリーエンジンの復活」だということには、マツダファンならずともクルマ好きなら胸アツになっちゃうのではないでしょうか。
個人的には、こんなにボンネットを長くしちゃって、一体この中に何個のロータリーエンジンを仕舞うつもりだろうかとクビひねってしまいました。もしや4ロータリーのモンスターマシンにしちゃうつもりなのか、はたまた床下にバッテリーを敷きつめて電気自動車にし、ロータリーをレンジエクステンダーに使うってテもあるし、もちろんバッテリーを床下へというならハイドロジェンREのプラグインハイブリッド版なんていうのも考えられます。いやはや、デザインだけでなく色んな夢を見させてくれる、それもこのRX-VISIONのスゴイところなのでした。
そもそも、エコカーや先進技術を搭載した車がカッコ悪いなんて言語道断! っていうのが私の持論。
カッコいいからこそみんなが興味を持つ。エモーショナルなデザインだからこそ、こういうのに乗ってみたい! って思わせる。それを現在、市販モデルで体現しているのは他ならぬテスラの「モデルS」だったり、BMWの「i8」だったりするんじゃないかなと思います。走行性能もそうだけど、やっぱりクルマはかっこよくなきゃ! そういう意味でもRX-VISIONには超拍手!
ちなみに、先日このRX-VISIONをデザインした前田育男氏にお会いした際、「で、実際のところどういう方式でロータリーエンジンを乗せるんですか?」と聞いたら、「だってRX-VISIONはデザインコンセプトですからね、まだ分かりませんよ。でもね、1つだけホンネを言うと、ロータリーエンジンを搭載するってことだけにフォーカスをすれば、ボンネットはあんなに長くなくてもいいし、あんなに乗員スペースを小さくしなくてもいいんです。だけど、みんなワクワクするでしょ?『あんな長いボンネットに何を収納するんだろう』って想像するでしょ? そういうことこそがコンセプトモデルを作る醍醐味(だいごみ)なんです。お客さまと一緒にワクワクしたいじゃないですか!」と破顔一笑。
ちぇ、思いっきり踊らされちゃったよ! と、自分がRX-VISIONの前でああだこうだアタマを悩ませてたことを、ニヤリとさせられるご返答でした。
いやはや、マツダの発想はまだまだナナメ上いってます。今後の勢いもしばらく止まらないんじゃないかな?と期待できそうな空気をヒシヒシ感じちゃいましたよ。
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