グローバルでSCMを推進する組織や団体はいくつかある。それぞれ成り立ちが異なるが、それぞれの団体の知名度を見てみるとAPICSが圧倒的に高いことが分かる(図1)。さらに2014年には、SCORを制定し知名度2位の「サプライチェーンカウンシル(SCC)」と統合。さらに知名度を拡大している。2015年に入り、物流系団体のAST&L(American Society of Transportation and Logistics)との統合発表などもあり、サプライチェーンの組織範囲を拡大するとともに知名度も広げている。
APICSが重要視されている理由として、次に注目したいのは知識体系である。APICSの知識体系には「OMBOKといった知識体系フレームワーク」と「APICS Dictionaryにあるサプライチェーン用語の辞書」が定義されている。
まず、OMBOK(Operations Management Body of Knowledge Framework)であるが、サプライチェーン全般の体系を整理したドキュメントがあり、サプライチェーン全体像概要を把握するために有効である。これらは、APICSのWebサイトから無料でダウンロードできる。各項目の方法論詳細は、後で紹介する資格取得のための教育資料に含まれる。
次にサプライチェーン用語が定義された辞書、APICS Dictionaryがある。ここには日本発のサプライチェーン用語も含まれる。「TPS(Toyota Production System)」や「TQM(Total Quality Management)」に関連する用語など、グローバルで評価された日本的手法が用語として定義されている。これらはグローバル標準として抽象化されたものであり、先に示した“ガラパゴス”サプライチェーンとは異なるものである。APICSのWebサイトやスマートフォンアプリから誰でもアクセスし検索できるので、海外人材とのコミュニケーションにぜひ活用してもらいたい。辞書は英語であるが、現在APICS有資格者による日本語化プロジェクトを進めており、近いうちに日本語翻訳版を公開できる予定である。
最後に資格制度である。APICSでは「CSCP(Certified Supply Chain Professional)」と「CPIM( Certified in Production and Inventory Management )」の2つの資格制度がある。この違いを一言で言うと、CPIMは「サプライチェーン・オペレーション専門家資格」、CSCPは「サプライチェーン全体を包括する専門家資格」といえる(図2)。何よりこの資格の知名度の高さは、世界中の取得者が多いということからも把握できる。82カ国で、CPIMは10万人、CSCPは1万7000人が取得している。また、外資系企業では職務ランクを上げるための推奨資格として定義されていたり、キャリアアップ(報酬向上)のための資格としても活用されたり、社会的に認知されている。
次ページでは、CSCP資格についてより掘り下げて解説する。
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