グローバルサプライチェーンを運営していく上で“世界共通言語”とも見られている「APICS」を専門家が解説していく本連載。2回目はAPICSの「CSCP資格」について紹介する。
第1回:「グローバル最適地生産」実現に不可欠な“標準化”と“共通言語”
日本の現状を見てみると、少子高齢化(2015年は1億2500万人→2035年は1億1068万人予測、11%減)、生産人口の減少(2015年は6841万人→2035年は5380万人予測、21%減)、GDP(国内総生産)減少、新興国企業の侵攻など日本の将来には悲観的な予測が渦巻いている。
しかし、最近では円安による海外観光客の急増や“Made in Japan製品”の爆買い、TPPへの参加など、日系企業にとっては明るい話題も増えてきた。これによって、海外生産を日本工場に回帰させ、Made in Japan製品を再開する企業や、海外向けe-コマース事業を推進する企業など、新たなビジネス機会を構築する動きも出てきつつある。
一方で、これまで開発進出が進んでいた中国ビジネスに関しては、経済成長減速や人件費高騰により減退傾向が見える。最近はASEAN市場へのシフトや工場移転などが進んでおり、世界の経済地図はさらに変化の様子を見せている。
ただこれら先の状況がどう変わろうとも、今後グローバルを視野に入れたビジネス展開は日本企業にとって必須となり、海外との関連性はさらに増加するのは間違いない。既に海外展開を実行している大手製造業だけでなく、中堅製造業、小売、食品、サービス産業など各業界の海外マーケット開発やサプライヤー開拓が加速する。同時に海外ビジネスで活躍するためのグローバル人材の育成も、企業の重要課題となってきているといえるだろう。
筆者のサプライチェーン経験は、日系製造業の社内TQM推進から始まり、その後コンサルタントとして日系外資系企業のグローバルSCM改革やERP導入支援に従事し、現在はサプライチェーンの最末端となるロジスティクスに関わっている。
多くの企業のコンサルティングを行っていると、プロジェクトの実行アプローチは外資のトップダウン型と日系のボトムアップ型と異なっているものの、外資でも日系でもプロジェクトの中で発生する共通の問題点があった。外資系企業は日本子会社へのグローバルプロセスの導入に苦戦し、日系企業は自社内業務プロセスの効率化やERPシステムによる標準化に苦戦するという点だ。
その共通の根本原因は、日本固有の商習慣にある。具体的には後で紹介するが、この特殊な商習慣は、日本国内だけで仕事や生活をしていると当たり前のことで意識しにくい。しかし、“そこが変だよ日本人”といった別角度からの視点で観察すると、その違いと特異性が認識できるという、いわゆる“ガラパゴス化”したサプライチェーンなのである。
そして最近のロジスティクスの現場経験においては、サプライチェーン上流の“おかしなこと”に起因するゆがみとムダに遭遇する機会が非常に多い。当然、日本流の良い点があることは理解しているが、まずはこの海外標準のサプライチェーンと日本のサプライチェーンがどのように違うのかという認識を持たなければ、グローバルで最適なサプライチェーンを構築するのは難しいということが理解できるだろう。その例としてキャッシュフローを考えてみよう。
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