オムロンでは、オートメーションの方向性の中で「3つの“i"」を実現する技術革新を目指す。3つの“i"とは以下の3つの方向性である。
これらにより、制御革新により機械の生産性向上を実現するとともに、情報の活用による生産性向上と品質向上、人と機械の協調による安全・安心や新たなオートメーションの実現、などに取り組んでいく。
これらの実現を目指し、M&Aや提携などを積極的に進めている。既に2014年4月からマイクロソフトや富士通と提携した実証実験を進めている(関連記事)他、2015年7月にはモーション制御機器メーカーであるデルタ タウ データシステムズの買収を発表(関連記事)。さらに2015年9月には産業用ロボットメーカーであるアデプトテクノロジーの買収も発表(関連記事)しており、積極的なポートフォリオ拡大を進めている。また、2014年12月にはロボットベンチャーのサイバーダインとの事業提携なども行っており、“人間”領域のオートメーション化への布石なども打っている※)。
※)関連記事:「生産革命」で狙う“ヒト”オートメーション化の世界
ただ、いくらポートフォリオの拡張を図っても、ICTから製造現場まで全てを自社で賄うことはできない。それではオムロンの強みはどこにあるのだろうか。
大塚氏は「オムロンの強みは“標高10m以下の世界”にある」と強調する。生産現場を支える仕組みを高度に例えるとすると、ITベンダーが取り組む基幹系や上位系のシステムは現場を俯瞰して見る高度100mの世界となる。現場の情報を取りまとめ上位系システムとの連携を実現する産業用PCレベルの高さを10mレベルとすると、センサーや製造装置の現場が0〜1mとなる。これらの10m以下の領域で強みを発揮するのがオムロンというわけだ。「これ以上の上流の領域についてはパートナー企業との協業や共同開発などを行い、全体のソリューションを構築していく」(大塚氏)。
オムロンでは自社が展開する製品について「ILO+S」(Input、Logic、Output、Safety)と位置付けていたが、今後は買収した産業用ロボットも含めた「ILO+S+R」での製品展開を推進。“標高10m以下”のこれらの製品群の情報化を進め、製造現場の革新を推し進めていく。その一環として新たにセンサー製品の「IO-LINK」対応を進める。IO-LINKは国際標準規格IEC 61131-9で規定されたセンサーとアクチュエーター通信のための標準化技術だ。現在、欧米メーカーを中心にグローバルで対応製品が拡大しているという。
これにより、最終的に2020年までに全てのFA製品のIoT化を進める方針だ。「まずは近接スイッチと光電センサーでIO-LINK対応を進める。早い製品では2016〜2017年に製品として登場する見込みだ」と大塚氏は述べている。
前編では、オムロンが製造業革新の動きをどう捉え、どういう戦略を取るのかという点を紹介した。後編では、これらの革新の動きを取り込むために自社工場で行う取り組みについて紹介する。
(後編に続く)
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