会場の奥手のスペースに、「リーフ」「i-MiEV」「アウトランダーPHEV」「i3」など、日欧自動車メーカーの電気自動車やプラグインハイブリッド車がズラリと並んだ。その周辺に、電動二輪車や電動ロードスケーターのメーカー、普通/急速の充電器のサービスプロバイダー、さらにSamsung SDI(サムソンSDI)が電動車両関連でリチウムイオン電池や軽量化のための車体技術の展示を行った。
サムソンSDIの関係者によると「今後はエネルギー密度の高いリチウムイオン電池を積極的に市場投入し、航続距離を延ばすことで電気自動車に対する顧客満足度を上げて、量産効果を高めていきたい」と意気込みを語った。具体的には、BMW「i3」向けに現在は60Ahのセルを供給しているが、同車のマイナーチェンジを受けて94Ahのセルを供給するという。
またプラグインハイブリッド車用の電池セルも展示された。フォルクスワーゲン用は26Ah、BMW向けは28Ahだった。
Qualcomm(クアルコム)も出展していた。電気自動車のフォーミュラカーレース「フォーミュラE」のセーフティカーとなったBMWの「i8」に、同社のワイヤレス充電システム「Halo」を提供している。Haloの担当者によるプレゼンテーションが行われ、「米国自動車技術会(SAE)によるワイヤレス充電の標準化の協議は最終段階に入っており、電気自動車やプラグインハイブリッド車の普及に伴い、当社のHaloも量産段階に入っていく」と説明した。
フランクフルトモーターショーで初開催となったNew Mobility Worldの客入りは、報道陣向け公開日と一般公開日初日を加えた3日間を見た限り、かなり少なかった。最も集客したのは、報道陣向け公開の2日目の夕方、Googleの自動運転車に関する講演だった。
客入りがどうであれ、筆者としては、New Mobility Worldが、ハードウェア、ソフトウェア、ビジネスモデル、それぞれの観点から「次世代のクルマの在り方」について、メーカー、サービスプロバイダー、メディア、そしてユーザーが意見交換できる素晴らしい場だと感じた。
そこで筆者は今回のショーの取材中、日本の自動車メーカーやティア1サプライヤの関係者への取材や意見交換の際に「ぜひ、New Mobility Worldを見て欲しい」と頼んだ。だが彼らの多くは、New Mobility Worldの“意味すること”を理解せず、実際に足を運ばなかったようだ。仮に視察したとしても、さらっと見ただけで、出展者らと意見交換する機会はほとんどなかったようだ。
自動車業界にとって時代は今、大きく変わろうとしている。だがそれに対する危機感が日本の自動車業界に希薄であることを痛感させられた。
本稿を読まれた日本の自動車業界関係者で、2015年9月27日まで開催されている「フランクフルトモーターショー2015」に行く機会がある方は、ぜひNew Mobility Worldに行き、会場で意見交換してもらいたい。日本の自動車業界の中にこもっているだけでは分からない、時代の変化を感じられるはずだ。
桃田 健史(ももた けんじ)
自動車産業ジャーナリスト。1962年東京生まれ。欧米先進国、新興国など世界各地で取材活動を行う。日経BP社、ダイヤモンド社などで自動車産業、自動車技術についての連載記事、自動車関連媒体で各種連載記事を執筆。またインディカーなどのレース参戦経験を基に日本テレビなどで自動車レース番組の解説も行う。
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